家庭医学館 「化学物質による食中毒」の解説
かがくぶっしつによるしょくちゅうどく【化学物質による食中毒】
防腐剤(ぼうふざい)、着色剤、甘味料などの食品添加物で、許可されていないものを使用した食品で食中毒がおこることがあります。
防腐剤では、ホウ酸類、ホルムアルデヒド、着色料では、オーラミン(黄色)やローダミンB(赤色)など、人工甘味料では、ズルチン、パラニトロオルトトルイジンなどの不許可添加物の使用で食中毒がおこったことがあります。また、許可されている添加物でも、定められた以外の食品に使用されたり、使用量が多すぎたりすると、食中毒がおこります。
たとえば、漂白剤(ひょうはくざい)兼防腐剤として、給食のうどんに過酸化水素(かさんかすいそ)を過剰に使用したために、中学生がのどの痛みや吐(は)き気(け)をおこしたことがあります。
ヒ素、アンチモン、銅、鉛、水銀、亜鉛(あえん)、カドミウム、バリウムなどの有毒金属を含んだ規格外の不良品の使用で、食中毒がおこったこともあります。また、発がん物質を含んだ不良品もあります。
●症状
原因物質によっていろいろで、胃腸・肝臓・腎臓(じんぞう)・中枢神経(ちゅうすうしんけい)に障害がおこって、生命にかかわることもあります。
●治療
「食中毒が疑われるときの手当」を参照してください。
●予防
食品添加物は、食品衛生法によって取り締まられているのですが、不良業者が有害品を使用することがあるのです。けばけばしい色の食品は、買わないようにしましょう。
■農薬による食中毒
農薬類(殺虫剤)が濃厚に付着した野菜や果物をよく洗わないで食べたり、殺虫用の薬液を誤って子どもが飲んだりしておこる食中毒が少なくありません。外観が食品に似ている殺虫剤や工業薬品を誤って料理に使っておこる中毒もあります。
そのほか、工業廃液のために魚介類(ぎょかいるい)や農作物に有毒化学物質が蓄積して中毒をおこした例(有機水銀(ゆうきすいぎん)中毒、カドミウム中毒)、食品の製造・加工中に有害物質が混入して中毒をおこした例(カネミ油症(ゆしょう))などがあります。
■食器や容器による食中毒
合成樹脂の食器の場合、ホルムアルデヒドやフェノールが溶け出してくる不良品があります。
また、亜鉛びきの容器に酸性飲料を入れると中毒がおこります。
鉛の含有量の多いはんだづけの缶詰で中毒をおこしたり、粗悪な釉薬(ゆうやく)を使用している陶磁器の場合は、鉛が溶け出して中毒をおこすことがあります。