歌舞伎狂言。時代物。通称《高時》。河竹黙阿弥作。1884年11月東京猿若座初演。配役は北条高時を9世市川団十郎,衣笠を4世中村福助(のちの5世歌右衛門),大仏(おさらぎ)陸奥守を市川権十郎ら。〈求古会〉のために新史劇をという希望により,いわゆる演劇改良運動の一つとして書かれた活歴劇(活歴物)で,上・中・下の3巻に分かれる。中の巻は陸奥守の家臣本間山城守の大館次郎討伐,下の巻は新田義貞の話であるが,現在では上の巻の高時のくだりだけが上演される。執権職北条高時の権勢を誇るさまと,それを嘲弄する天狗の舞を描いたもの。高時が天をにらむ幕切れの演出,幕明きに高時が横向きに坐っている演出など先例がなく,9世団十郎の活歴好みの見本だが,初演当時の批判は厳しく,仮名垣魯文は高時(すなわち団十郎)が求古会の連中(すなわち天狗連)に翻弄されている漫画を新聞に載せて,団十郎を激怒させた。その後6世尾上菊五郎がこれを継承した。新歌舞伎十八番の一つ。
執筆者:落合 清彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…こうした団十郎らの熱意とは裏腹に,一般観客の評判は悪く,新聞からも批判され知識人の支持もしだいに失い,明治20年代後半には終焉した。現在も演ぜられる活歴物あるいは活歴的演出の作品には《増補桃山譚》(1873),《北条九代名家功》(1884)等の黙阿弥作品,《春日局》(1891),《大森彦七》(1897)などの福地桜痴作品があげられる。演劇改良運動【林 京平】。…
※「北条九代名家功」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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