北東航路(読み)ほくとうこうろ(その他表記)Northeast Passage

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「北東航路」の意味・わかりやすい解説

北東航路
ほくとうこうろ
Northeast Passage

ユーラシア大陸北岸,ロシアの北シベリア沖の北極海を通る航路北極海航路とも呼ばれ,今日では「北方航路」というロシア式の呼び名が用いられることも多い。ヨーロッパからみて,大西洋から太平洋へ抜ける航路で,北アメリカ大陸の北極海沿岸を通る北西航路のユーラシア版にあたる。結氷しないスカンジナビア半島北岸のノルウェー海バレンツ海を経由し,ロシアの北西沿岸をほぼ東に向かって進み,バレンツ海とカラ海を結ぶカラ海峡を通り,そのまま東へカラ海,ラプテフ海東シベリア海チュクチ海と進んだのち,南に進路をとってベーリング海峡を抜け,太平洋に入る。カラ海峡からベーリング海峡までの海域は一年の大半を氷に閉ざされ,船の航行は困難をきわめたが,16世紀には北極海を経由する交易路への関心がヨーロッパで高まり,1590年代にウィレム・バレンツがこの海域を探検。1648年ロシアの探検家セミョン・デジニョフが,1728年にはビトゥス・ベーリングがベーリング海峡を探検し,1878~79年にアドルフ・エリク・ノルデンショルドが全航路の走破に成功した。1920年代にソビエト連邦が北極海航路の開発を始め,1930年代には内航船夏季にかぎって航行,1934年には砕氷船によって通年の航行を実現し,第2次世界大戦後は航行可能な期間も拡大した。ソ連崩壊後 21世紀初めまでは航行船舶が減少したが,その後はロシアによる利用が増加している。また同時期,ロシアが高性能の砕氷船を導入し,航路沿いの港湾施設を整備したことに加え,結氷期間が短くなる傾向も手伝って,外国の海運業者も北東航路への関心を高めている。2009年には外国籍の商船が初の完全横断を果たし,翌 2010年にはロシアの旅客船タンカーも,この種の船としては初めて全航路にわたる航行に成功した。

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百科事典マイペディア 「北東航路」の意味・わかりやすい解説

北東航路【ほくとうこうろ】

ヨーロッパから北東に航海し,ヨーロッパの北を過ぎてベーリング海峡から太平洋,アジアに達する航路。16世紀以後,英国オランダ,ロシアの探検家たちが航路開発の努力を重ね,1878年−1879年ノルデンシェルドが全コースを完航した。20世紀に入って,旧ソ連はこの航路の調査開発に努めた。→北西航路
→関連項目北極地方

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世界大百科事典(旧版)内の北東航路の言及

【北極】より

…とくに極地方では夏の間太陽が沈まないことから,北極の海はむしろ暖かいはずだとの俗信も生まれ,やがて二通りの航路が探られるようになった。北ヨーロッパから西航し北アメリカ北部の西半球を通る北西航路とシベリア北部を通る北東航路である。大西洋,インド洋を通るキタイへの航路はすでにスペイン,ポルトガルが独占していたので,イギリス,オランダ,ロシアは独自または共同で航路探査に当たった。…

※「北東航路」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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