十郷用水(読み)じゆうごうようすい

日本歴史地名大系 「十郷用水」の解説

十郷用水
じゆうごうようすい

丸岡まるおか東二ツ屋ひがしふたつやに設けられた鳴鹿なるか大堰で、九頭竜くずりゆう川の水を取入れ、新江しんえ用水・高椋たかぼこ用水などを分流し、神明しんめい井口(現丸岡町為安)を通過したのちふくろ(現吉田郡松岡町樋爪)磯部いそべ用水と分れ、横落よこおち堰で水量を調節して、坂井さかい町・芦原あわら町をはじめ、金津かなづ町・三国みくに町の一部までも灌漑する用水。これらの地域が、かつて奈良興福寺領河口かわぐち庄の一〇郷(本庄・新郷・王見・大口・関・溝江・細呂宜・荒居・兵庫・新庄)に属し、その地を潤したところからこの名が付けられており、「大乗院寺社雑事記」などでは鳴鹿なるか川とも記す。元禄一一年(一六九八)当時、当用水は四二ヵ村、三万四千八二八石を灌漑していた(大連家秘簿)

用水の起源は、「越前国名勝志」によれば、保元年中(一一五六―五九)越前惣追捕使藤原国貞が奈良の春日大明神を十郷に勧請し、神料として六〇〇余町を寄進したが、水田ではなかったので、水を求めて九頭竜川をさかのぼったところ、山から幣をくわえた鹿が現れて川を下って三声鳴き、次には川を離れて西に向かい本庄ほんじよう郷の春日社に至って姿がみえなくなったので、鹿の歩いた道筋を掘ったところ、水が通じたという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「十郷用水」の意味・わかりやすい解説

十郷用水
じゅうごうようすい

福井県北部,福井平野の一部をなす坂井平野耕地を灌漑する最大用水路。平安時代後期に開削された。灌漑面積約 100km2取水口九頭竜川が福井平野に出る坂井市丸岡の鳴鹿大堰で,ここから北西坂井平野を斜めに横切り,途中新江用水,高椋用水,磯部用水などの諸用水を分かち,灌漑を行なう。

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世界大百科事典(旧版)内の十郷用水の言及

【河口荘】より

…そのときの尋憲の日記〈越前国相越記〉は一向一揆討滅直後の凄惨な荘内の状況を伝えている。 なお河口荘十郷が中世を通じて一つの荘園としてまとまりを保ったのは,平安末期からこの地域の開発を可能にしてきた九頭竜川から取水する鳴鹿用水=十郷用水の水利権にあったといえよう。十郷の各春日社は井ノ口神社で,用水を配分する場所にあり,大連家は本庄郷の春日惣社の神官であるとともに用水を管理して荘内の支配的地位にあった。…

※「十郷用水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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