2国間あるいは多数国間で、輸出入の均衡を図り貿易を促進するために貿易協定や支払協定を締結し、それに基づいて行う貿易をいう。貿易協定では、当事国間で取引される商品の品目、数量、関税率などが取り決められる。また支払協定あるいは清算協定には、当事国の中央銀行に清算勘定を置いて、貿易の支払いは為替(かわせ)を用いずに清算勘定への受け払いによって行い、中央銀行がその債権・債務をまとめて相殺するという双務的清算協定や、貿易の支払いには為替を用いるが、当事国の自国通貨と相手国通貨の一定額を特定の為替レートで交換することを約定するという双務的支払協定などがある。このような協定貿易は、1930年代の大不況に伴って、国際収支の悪化に悩む世界の多くの国々が、関税障壁を高め、為替管理を強化して、世界貿易が縮小の一途をたどった際に、これを打開するための方策の一つとして、とられ始めたもので、31年のスイス・ハンガリー間の協定が最初といわれ、その後急速に発展した。
第二次世界大戦後も、深刻なドル不足対策として協定貿易が盛んであったが、この貿易方式は第三国に対する差別待遇をもたらすものであり、自由で多角的な貿易を推進するというIMFや世界貿易機関(WTO)の理念とも相いれないため、今日では、ほとんど行われていない。
[志田 明]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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