厚み計(読み)あつみけい(英語表記)thickness gauge

改訂新版 世界大百科事典 「厚み計」の意味・わかりやすい解説

厚み計 (あつみけい)
thickness gauge

厚さ計ともいう。いろいろの板,帯などの厚さや,塗膜,めっきの厚さの測定に用いる計器の総称である。電気マイクロメーターなどの比較測長器を利用したものと,厚さの関数となる他の物理量,または板固有の特性から求めるものとがある。それぞれ試料を抜き取って測定する形式のものと,走間厚み計といい,製造工程中に連続して測定する形式のものとがある。また測定を片側から行う方式と,両側からはさんで測定する方式のものとがある。

 電気マイクロメーターダイヤルゲージローラを介して測定物と接触させる形式のものは走間厚み計として広く用いられている。磁気厚み計は強磁性体およびそれらの上の薄い非磁性体の厚さ測定に用いるもので,磁気吸引力を利用したものと,磁気回路中の鉄板および薄膜磁気抵抗を利用するものとがある。後者では測定物の一部を磁気飽和させて変化を求めるものと,不飽和の小さい磁化力で測定するものとがある。導電体の厚さ測定には一定距離間の電気抵抗を,導電体上の導電体膜では両者間に生ずる熱起電力を,基板のみの導電体の場合は渦電流や絶縁破壊電圧を測定する方法が用いられる。コンデンサーの電極の間に測定すべき板を通し,静電容量の変化を走間で求めることも行われる。超音波厚み計は共振する周波数を見いだすものである。放射線厚み計は放射線を測定物に当て,放射線が測定物を通過する間の吸収量を測定するものと,反射する背面散乱を測定するものとがあり,非接触の走間厚み計として用いられる。いずれも質量計として動作するもので,透過形では厚さと密度との積を検出し,密度を一定と仮定して厚さを求めている。使用する放射線は主としてβ線,γ線およびX線である。β線源にはタリウム204,ストロンチウム90などを用い,金属薄膜,ゴム,プラスチックフィルムなどの厚さ測定に用いる。X線源にはX線管,またはβ線源による制動放射を用いる。光を用いた厚み計として近赤外のエネルギーの吸収を利用したもの,赤外線の反射位置による光量変化を求めるものなどがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「厚み計」の意味・わかりやすい解説

厚み計
あつみけい

板状や膜状の材料の厚み、あるいは塗装、めっきなどの被膜の厚みを測るための計器をいう。広くマイクロメーターや隙間(すきま)ゲージなどのように、機械的に厚みを測定するものを含めることもあるが、普通はこれら長さ計以外のものの測定結果から厚みを推定する方式の計器をさしている。

 厚み計は、運動中の膜状被測定物の厚みを非接触で連続的に測定・制御する場合や、被膜の厚みなどを非破壊的に測定する場合などに用いられる。原理としては、対象物の物性に関係する物理的現象を利用して対象物の厚みを推定するもので、代表的な器種に次のようなものがある。

(1)放射線厚み計 β(ベータ)線などの放射線が被測定物を透過するときの減衰量から厚みを推定する。

(2)超音波厚み計 超音波が被測定物中を通過する時間から厚みを求める。

(3)静電容量式厚み計 導体上に施された絶縁性被膜の厚みを静電容量の測定によって求める。

(4)電磁誘導式厚み計 磁性体上に施された非磁性体被膜の厚みを、電磁誘導を利用して求める。

 ただし、これら厚み計では、測定に利用する現象に関する被測定物の物性値、たとえば放射線吸収率、音波の速度、誘電率、透磁率、光を利用するものでは屈折率などが知られていなければ正しい測定値が得られない。したがって、実際の測定に先だち、被測定物と同じ材料でつくられた厚み標準試料を用いて計器の目盛りを校正しておくか、または補正値を求めておくことが必要である。

[三井清人]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「厚み計」の意味・わかりやすい解説

厚み計
あつみけい
thickness gauge

マイクロメータなどによる直接的な測定の困難なもの,特に薄い膜などの厚みを測定する計器。干渉を利用した光学的方法によるもの,α線や電子線の通過におけるエネルギー損失や吸収から厚さを決定するものなどがある。 (→放射線厚み計 )

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