原子の種類をあらわす記号。元素記号とも呼ばれる。通常,元素名のラテン語,英語,ドイツ語等の頭文字またはこれに綴字中の特定の文字1個を付記して用い,水素(hydrogenium,ラテン語)H,水銀(hydrargyrum,ラテン語)Hg,カリホルニウム(californium,英語)Cf,タングステン(Wolfram,ドイツ語)Wのように記す。104番以上の超アクチニド元素については,1960年代中ごろ以降に相次いで行われた新元素超重核種の発見,短寿命核種としての同定・確認,命名の先取権等をめぐる先進国間の論争が入り込み混乱を生む可能性が多くなったため,78年新しい統一命名法が提案され,これが使用されるようになっている。この提案は,〈103番元素までは元素固有の由来,特性等による従来の1文字または2文字による原子記号をそのまま使用し,103より大きな原子番号の元素は表1に示すように各けたの数字に固有の元素名数詞ならびに対応する原子記号文字をあてはめた3文字表示を用いる〉とするもので,この方式によれば元素名および原子記号は,おもしろみのまったくない反面,論争・混乱を生むおそれのない原子番号に由来する方法で機械的に記述することが可能になる。たとえば104番元素はUnq(ウンニルクアジウムunnilquadium),111番元素はUuu(ウンウンウニウムunununium)のように記す(表2参照)。このような3文字表示による重元素原子記号および系統的元素名に対して,原子量委員会は83年,〈104番以上の元素については104番元素Element104,105番元素Element105のように原子番号を用いて呼び,とくに原子記号を用いることはしない〉という新たな提案を行っている。これは,これら超重元素に関する〈化学〉自体がほとんど未知領域にあるという現状と,化学者と物理学者との意見に大きなくい違いを生じていることへの配慮からなされた提案であり,84年4月の段階では最終決定には至っていない。しかしながら,これら超重元素についても,その〈化学〉を論ずるために必要となる元素名と原子記号との記述について,早急な決定が望まれている。
原子記号は元素の1個の原子を意味すると同時に,その量1mol(アボガドロ数と同数の原子の集団)をも意味する。核種を区別する必要のある場合は,原子記号Xの左下に原子番号Z,左上に質量数A(必要ならば右下に中性子数N)を付して,のようにあらわすが,通常Zは原子記号Xに固有のものであり,NはA-Zにより求められるため,通常はaXで足りる。たとえば,11番元素ナトリウムの質量数22の核種ナトリウム22は2121Naまたは22Naのようにあらわされ,質量16,17,18の酸素の同位体は16O,17O,18Oのように区別して示される。また,励起準位にある準安定核種は質量数の次に準安定核であることを示す記号m(metastable準安定)を付し,137mBaのように記して,これを基底準位にある質量数137の核種137Baと区別し,両者が互いに核異性体の関係にあることを明示する。
執筆者:藤本 昌利
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