日本大百科全書(ニッポニカ) 「双子のパラドックス」の意味・わかりやすい解説
双子のパラドックス
ふたごのぱらどっくす
特殊相対性理論における運動系間の時間の遅れに関する問題。アインシュタインは、時計を例にして、このパラドックス(逆説)を提案したが、のちにランジュバンにより、互いに運動する双子の兄弟間の時間の進み方の違いによるパラドックスという形で示され、このほうが有名になった。
双子のパラドックスでは、双子の弟が地球に残り、兄がロケットに乗り高速で地球を離れてある星に行き、また地球に戻ったと想定する。このとき地球に居続けた弟からみると、兄が高速で運動していたのであるから兄の時間が遅れ、弟に対して兄が年をとっていないと主張する。一方、ロケットに乗っていた兄からみると、弟は地球といっしょに兄から高速で遠ざかっていたのだから、弟のほうこそ年をとっていないと主張する。このように互いが年をとっていないと主張しているため、運動する座標系では時間が遅れるという特殊相対性理論の一つの結論が破れることになり、パラドックスであるという。しかし、これは兄と弟のそれぞれの運動が完全に相対的でないとみることから説明される(つまりパラドックスではない)。一つの説明は、四次元ミンコフスキー空間での兄のロケットの飛行経路の長さが弟より長いため、弟のほうがより年をとるというものである。また、ロケットが引き返すときに反転するが、そのときの加速度が一般相対性理論での重力による時間遅れに相当するので、弟のほうがより年をとるという説明もある。
[山本将史 2022年7月21日]