撞木(読み)シュモク

デジタル大辞泉 「撞木」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐もく【×撞木】

仏具の一。鐘・たたきがねけいを打ち鳴らす丁字形の棒。また、釣鐘を突く棒。かねたたき。しもく。
《形が1に似ているところから》突棒つくぼう異称

し‐もく【×撞木】

しゅもく」の音変化。
「―を取りて振りまはして、打ちもやらで」〈宇治拾遺・一〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「撞木」の意味・読み・例文・類語

しゅ‐もく【撞木・鐘木】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏具の一種。鐘、鉦(たたきがね)などを打ち鳴らす丁字形の棒。かねたたき。また、釣鐘をつく棒。しもく。〔黒本本節用集(室町)〕
    1. 撞木<b>①</b>
      撞木
    2. [初出の実例]「その坊さまに撞木(シュモク)斗もたせて」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)七)
    3. [その他の文献]〔文献通考‐楽考〕
  3. しゅもくなり(撞木形)
    1. [初出の実例]「病人と鉦木(シュモク)に寐たる夜さむ哉〈丈草〉」(出典:俳諧・韻塞(1697)九月)
  4. しゅもくづえ(撞木杖)
    1. [初出の実例]「若衆は追付入物とてほうろく頭巾鐘木(シュモク)にてももらはねばおかず」(出典:浮世草子・椀久二世(1691)下)
  5. つく鐘の音のこと。
    1. [初出の実例]「明けの撞木(シュモク)に数とれば」(出典:一中節・家桜傾城姿(家桜)(1736))
  6. つくぼう(突棒)」の異名
    1. [初出の実例]「三尺撞木の上のはりつけ人の喉もとを槍で突いたり」(出典:続あにいもうと(1934)〈室生犀星〉)
  7. 歌舞伎で、張り子の馬が長時間立っているとき、その腹の下にあて、足にはいっている役者の肩にかかる重量を軽くする器具。撞木形の木に黒布をまいたもの。また、幽霊提灯から抜け出すときにつかまる同形のものをもいう。
  8. しゅもくざめ(撞木鮫)」の略。

撞木の語誌

( 1 )もともとは「鐘木」と書き、呉音で「シュモク・シウモク」と読んだらしい。「文明本節用集」には「杵 シモク 或作鐘木 シユモク」とある。「鐘」は、「法華経単字」に「シュウ 主ウ」、「法華経音訓」に「鐘(シュ・シュウ)」などと注記されている。
( 2 )中世から近世にかけて、「鐘」の音読みは「ショウ」に固定し、「シュ」の音が常用音として失われていき、「鐘木」の表記例も少なくなる。のち、意味の上から当てた「撞木」(「撞」の音は漢音タウ、呉音ダウ)、「杵木」(「杵」の音は漢・呉音ショ)の表記、特に、「鐘」とつくりが同じ「撞」を用いた「撞木」が広まっていった。→「しもく(撞木)」の語誌


し‐もく【撞木】

  1. 〘 名詞 〙 「しゅもく(撞木)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「ある僧の、礼盤にのぼりて、すこしかほげしき違ひたるやうになりて、しもくをとりてふりまはして、打ちもやらで」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
    2. 「悪し、其の義ならば、鳴様に撞とて鐘木(シモク)を大きに拵へて」(出典:太平記(14C後)一五)

撞木の語誌

「しゅもく」の転じた語形であるが、拗音の表記の問題があり、中世後期の節用集まで「しゅもく」の語形は見えない。「日葡辞書」は「しもく」のみを立項するが、同時期の節用集に両形が見られ、「妙本寺蔵いろは字」には「杵木 シュモク シモク共」とあるところから、おそらくは中・近世頃には両形が併存していたのであろう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「撞木」の解説

撞木
しもくのつじ

[現在地名]水戸市五軒ごけん町三丁目・さかえ町一丁目

富士山ふじさん町の中ほどから西に入り突当って南北に通じる町で、南は信願寺しんがんじ町、北は五軒町(長町)に突当る。町名の由来は町の形が能鉦を打つ撞木の形に似ていることにある(水府地理温故録、水府地名考、新編常陸国誌)。「水府地理温故録」によると、元禄三年(一六九〇)の令には「しもくのつじ」とするとあるが、同書では「四木のつじ」または「四木辻」とする。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の撞木の言及

【ばち(桴∥撥)】より

…邦楽器の打奏具としては,太鼓,かねなどの打ち棒をいうが,必ずしも棒状のもののみをいうのではなく,頭部を洋楽器のタンポンのように,なんらかのもので包んだものをもいい,その場合〈ばい〉ともいい,〈棓〉の字を当てることもある。また,棒の先で突き鳴らすものは,〈撞木(しゆもく)〉といって区別し,それにも梵鐘(ぼんしよう)を突く太い丸太状のものから,(かね)類をたたく丁字形のものまであるが,後者の頭部が球状になっている〈角(つの)撞木〉などは〈角桴〉ともいい,必ずしも〈撞木〉と〈桴〉とが厳密に区別されているわけではない。 日本の撥弦(はつげん)楽器のうち,とくに琵琶および三味線などの比較的大型の撥弦具を〈ばち〉といい,〈撥〉の字を当て,指先に付けたりはさんだりする義甲の〈爪(つめ)〉とは区別される。…

※「撞木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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