受益者負担の概念は,財政学的観点からは各種の公共料金,使用料,手数料,負担金,目的税等のすべてを含むものとして理解されているが,法律学では,国または地方公共団体が行う公共事業により特別の利益を受ける者に対して,特別の利益を基準に,それを限度として,その事業費の全部または一部を負担させる目的で課せられる金銭給付義務をいう。受益者負担金ともいう。現在,受益者負担については,個別法のなかに規定されるにとどまり(道路法61条,河川法70条,都市計画法75条等),一般的制度としては,確立していない。そのほかにも,地方自治法上の分担金(224条)は,受益者負担と同趣旨のものである。負担金には,そのほかに,〈原因者負担〉(下水道法19条,道路法58条,河川法67条,海岸法31条)と〈損傷者負担〉(下水道法18条)がある。都市計画税,水利地益税,宅地開発税等の目的税(地方税法702条,703条,703条の3等)は受益者負担に類する機能をもっているが,経費の限度と賦課基準との関連性がないことなど,法的性質には差異があるものと考えられている。しかしその反面で,受益者負担は行政庁の命令によって一方的に課せられるもので,強制徴収が認められるなど租税に類似した性質をもっている。具体的には,受益者負担は,受益を限度とする客観的な算定基準が定めにくいなどの理由から,ほとんど活用されていないのが現状である。これに反して,最近では,宅地開発指導要綱などに基づいて,地方公共団体が宅地開発業者に対して開発負担金を徴収し,公共施設の建設費等にあてることが一般化している。このような法制度外の受益者負担ないし原因者負担は,租税法律主義,強制寄付の禁止(地方財政法4条の5)との関係で問題があるとされ,その是正を求める国の通達なども出されている。
執筆者:小高 剛
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…これは社会的必要性を根拠にしているが,公的扶助の場合のように経済的ニーズだけを考慮しているわけではない。人口高齢化とともに急増している各種老人福祉サービスもこのカテゴリーに入るが,サービスそれ自体の必要性を基準にしているため,負担能力に応じた受益者負担が導入されている。
[社会保障制度の範囲]
社会保障の範囲は,それぞれの歴史的・社会的・経済的条件の違いを反映して必ずしも一様ではない。…
※「受益者負担」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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