土地基本法(読み)とちきほんほう

精選版 日本国語大辞典 「土地基本法」の意味・読み・例文・類語

とち‐きほんほう‥キホンハフ【土地基本法】

  1. 〘 名詞 〙 政府土地政策を推進するうえでの基本理念政策の基本的方向を定めた法律。平成元年(一九八九)一二月に成立。三章二〇条から成る。( 1 )公共福祉優先( 2 )適正かつ計画的な利用、( 3 )投機的取引抑制( 4 )受益に応じた負担、を基本とする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土地基本法」の意味・わかりやすい解説

土地基本法
とちきほんほう

1989年(平成1)に成立した土地についての基本理念を定めた法律。これは臨時行政改革推進審議会行革審)内の土地対策検討委員会(土地臨調)の答申を受けて成文化したもので、宣言法的性格を有するものである。

 土地基本法は「国、地方公共団体、事業者及び国民の」「土地についての基本理念に係る責務を明らかにするとともに、土地に関する施策の基本となる事項を定めることにより、適正な土地利用の確保」「適正な地価形成を図るための土地対策を総合的に推進し」「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与する」ために制定されたものである。基本理念として、「土地については、公共の福祉を優先させるものとする」と規定し、土地の取得、利用、処分等については、公共の福祉のため、土地の特性に応じた制限や負担が課されるべきことを示している。このことは、土地利用が公共の福祉の観点から決められ、そのもとで土地から得られる利益を国民が適正に享受しうるように配分することを意味する。そのため、「国及び地方公共団体は、適正かつ合理的な土地利用を図るため」、自然的、社会的、経済的、文化的条件を勘案し、必要な土地利用計画を策定し、必要に応じて広域的視点から、調整を図るべきだとしている。つまり、公共の福祉という観点は、土地の所有よりも利用が優先されるということを意味するものである。

 また、土地の投機的取引を抑制し、土地の価値が増加する場合には、「価値の増加に伴う利益に応じて適切な負担」が課されるべきこと、また国および地方公共団体は、「土地に関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有」し、「土地についての基本理念に関する国民の理解を深めるよう」に努め、事業者および国民は「国及び地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力するように努めなければならない」と規定している。

[伊藤善市]

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百科事典マイペディア 「土地基本法」の意味・わかりやすい解説

土地基本法【とちきほんほう】

1980年代後半の異常な地価高騰に対処するために,今後の土地政策の基本理念を表明した法律。1989年制定,1990年公布。土地利用に関する公共の福祉の優先,計画に従った適正な利用,投機的土地取引の抑制,地価の上昇に応じた受益者負担などの原則の確立により,土地需給の緩和を企図したもの。土地政策審議会の設置も規定。1992年には,その理念に基づいて,都市計画法建築基準法が大幅に改正された。
→関連項目地価公示法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土地基本法」の意味・わかりやすい解説

土地基本法
とちきほんほう

平成1年法律 84号。土地についての基本理念,国,地方公共団体,事業者,国民の責務,土地に関する施策の基本となる事項を定める法律。適正な土地利用の確保をはかりつつ正常な需給関係と適正な地価形成をはかるための土地対策を総合的に推進し,国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することをその目的とする。土地についての基本理念として,公共の福祉の優先,適正な利用および計画に従った利用,投機的取引の抑制,価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担を定めるほか,土地利用計画の策定,土地政策審議会などについても規定している。

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世界大百科事典(旧版)内の土地基本法の言及

【土地問題】より

…したがって今後の土地政策に望まれるのは,長期的見通しに基づいて設定された政策目標を実現するために,いくつかの手段を有機的に結びつけていく,総合的な判断である。住宅問題都市問題土地税制【華山 謙】
[土地基本法]
 1980年代後半の異常な地価高騰に対処するために,従来の土地政策体系を総括し,かつ今後の土地政策の基本理念を表明した1989年制定の法律。土地利用に関する公共の福祉の優先,計画に従った適正な利用,投機的土地取引の抑制,地価の上昇に応じた受益者負担などの原則の確立により,土地需給の緩和を企図したもの。…

※「土地基本法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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