歌合の形式にならい,俳諧発句を左右に番(つが)えて優劣を競うもの。作者は個人と多数のときがある。有名俳人に判者を仰ぐ一般的方法以外に,作者が集まり,その議論に従う〈衆議判(しゆぎはん)〉や作者自身が判者となる場合もあり形式は多様である。歌合と同じく,優れた方を勝ち,優劣が決められないときは持(じ)とし,判定の理由を判詞として書くのが一般であるが,これまた多様である。1656年(明暦2)の季吟判《俳諧合》が版本として最も古いが,発生は寛永(1624-44)ごろまでさかのぼりうるかもしれない。貞門の立圃(りゆうほ),季吟らに多く,有名な芭蕉の《貝おほひ》(1672成立)も季吟の影響下に成った。談林ではふるわなかったが,蕉門では俳風の転換点で《田舎句合》《常盤屋句合》《蛙合》《罌粟(けし)合》等々が成立しており,重要視されていたことがわかる。元禄・正徳期(1688-1716)も《五の戯言(いつつのたわごと)》《とくとくの句合》《伊丹発句合》等が成り,享保(1716-36)以後も江戸俳人に多く編纂され,天保ごろまで断続的に行われた。
→月並
執筆者:井上 敏幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
俳句2句を左右に並べて優劣を競い、勝ち負けを決め、記録したもの。歌合に倣ったもので、主として江戸時代に行われた。判定する人を判者(はんじゃ)といい、優れた句を勝ち、引き分けを持(じ)とし、判定理由を示す判詞を添えた。判詞は単純な寸評もあるが、文芸批評といえるようなものや、それ自体が一種の文芸的表現となっているものもある。1組の2句を一番といい、数十番の句合がひとまとまりとなっていることが多い。北村季吟判による『俳諧合(はいかいあわせ)』(1656)が、刊行されたものとしてはもっとも古く、芭蕉(ばしょう)の処女出版『貝おほひ』(1672)も句合である。芭蕉の門下には句合が多く、其角(きかく)の『田舎句合(いなかのくあわせ)』(1680)、杉風(さんぷう)の『常盤屋句合(ときわやのくあわせ)』(1680)がよく知られている。
[山下一海]
…和歌,漢詩,俳諧の優劣を判定した詞(ことば)。とくに歌合・句合において,判者が番(つが)わされた左右の歌・句についての優劣を勝・持(じ)(判定しがたい場合)とし,その判定理由を書いた詞をいうことが多い。平安初期をやや下ったころに起こり,鎌倉初期盛んとなった文学的歌合において,複数判者や衆議判,判に対する反駁としての陳状,さらに改判,再判などが行われた。…
※「句合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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