故事成語を知る辞典 「司馬遷と「史記」の時代」の解説
司馬遷と「史記」の時代
■司馬遷は、紀元前二世紀の半ばから、紀元前一世紀の初めにかけての人です。太古の昔から当時に至るまでの歴史を一つの書物にまとめた、壮大な歴史書の編纂は、もともとは、司馬遷の父、
■しかし、司馬談は、それを果たすことなく亡くなります。司馬遷は、臨終の場で、父からその完成を託されたのでした。
■その後、順調に進んでいた歴史書の編纂ですが、あるとき、大きな不幸が司馬遷の身に襲いかかります。時の皇帝の不公平な政治判断を正そうとした彼は、かえって皇帝の怒りに遭い、死刑を宣告されたのです。
■当時の制度では、死刑を免れるには二つの道がありました。一つは、大金を納めること。しかし、司馬遷にはそんな蓄えはありませんし、財力のある親戚や友人もいません。もう一つは、生殖器を切り落とすという、屈辱的な刑罰を受けること。彼は、父から託された仕事をまっとうするという、ただそれだけのために、この屈辱的な刑罰を受け入れたのでした。その間の事情を司馬遷は文章にして残しており、そこからは「命を鴻毛の軽きに比す」、「九牛の一毛」といった故事成語が生まれています。
■こうしてできあがった「史記」は、一〇〇〇年以上の時の流れの中を生きた多くの人々の姿を描き出した、比類のない歴史書となりました。中でも、紀元前八世紀から紀元前三世紀にかけての、春秋時代、戦国時代、そして短命に終わった
■春秋時代の壮絶な争いを伝える「会稽の恥を雪ぐ」、戦国時代の弁舌の士の活躍から生まれた「三寸の舌」、秦王朝を打倒すべく立ち上がった男のセリフ「王侯将相いずくんぞ種あらんや」、前漢王朝が樹立されるまでの戦いの中で、寄せ集めの兵士を動かす名将の手腕が光る「背水の陣」などなど、「史記」はまさに、故事成語の一大宝庫だと言えるでしょう。
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