九牛の一毛(読み)キュウギュウノイチモウ

  • きゅうぎゅう
  • きゅうぎゅうのいちもう〔キウギウ〕
  • の 一毛(いちもう)
  • 九牛

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

多くの牛のなかの1本の毛をいい、多数のなかのきわめて小部分を意味し、ものの数にも入らないことをいう。中国、漢代の歴史家で『史記』の著者として名高い司馬遷(しばせん)は、匈奴(きょうど)と戦って敗れ、これに降(くだ)った李陵(りりょう)を弁護して大論陣を張ったがために宮刑(きゅうけい)(死刑に次ぐ重い刑罰で、性器を除去される)に処せられたが、その際「仮令(たとい)僕法に服し、誅(ちゅう)を受くるも、九牛の一毛を亡(うしな)うが若(ごと)し」といったと「任安(じんあん)に報ずる書」に記されている。なお「滄海(そうかい)(青海原)の一滴」「滄海の一粟(ぞく)」というも同意である。

[田所義行]

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精選版 日本国語大辞典の解説

(多くの牛の中の一本の毛の意) 多数の中のきわめて少ない一部分。比較できないほど僅かなこと。
※将門記(940頃か)「其の遺れる者、九牛の一毛に当らず」 〔漢書‐司馬遷伝〕

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ことわざを知る辞典の解説

多くの牛の中の一本の毛。多数の中のきわめて少ない一部分。比較できないほどわずかなこと。

[使用例] 大海の一滴、九牛の一毛とは、人の常に言うところにして〈略〉九牛中の一毛は物の数にあらずとの意味ならん[福沢諭吉*福翁百話|1897]

[類句] そうかいいちぞく

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故事成語を知る辞典の解説

多数の中のきわめて少ない一部分のたとえ。取るに足りないことのたとえ。

[使用例] ほとんど総てが白色人の手腕によってされたのであります。もちろん日本人も手伝いは致しましたが、僅かに九牛の一毛に及びませぬ[長岡半太郎*湯川博士の受賞を祝す|1949]

[由来] 「文選」に収録されている、紀元前二~一世紀、前漢王朝の時代の歴史家、司馬遷の文章から。司馬遷はあるとき、皇帝の怒りにあい、極刑の宣告を受けてしまいます。後に彼は、そのときのことを振り返って、「もし自分が死刑になったとしても、『九牛の一毛をうしなう(数多くいる牛の中の一本の毛がなくなる)』ようなもので、世間には何の影響もなかっただろう」と述べています。しかし、このときの司馬遷は、執筆中だった歴史書を書き上げなければ、死ぬにも死ねないと考えて、死刑の代わりに宮刑(生殖器を切り落とす刑)という屈辱的な刑罰を受ける道を選びました。その結果、不朽の名著「史記」を後世に残すこととなったのでした。

[解説] 司馬遷のこの文章からは、「命を鴻毛の軽きに比すや「木石に非ずという故事成語も生まれています。

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