背水の陣(読み)ハイスイノジン

デジタル大辞泉 「背水の陣」の意味・読み・例文・類語

背水はいすいじん

《「史記」淮陰侯伝の、漢の名将韓信ちょうの軍と戦ったときに、わざと川を背にして陣をとり、味方に退却できないという決死覚悟をさせ、敵を破ったという故事から》一歩もひけないような絶体絶命の状況の中で、全力を尽くすことのたとえ。
[類語]専心打ち込む専念没頭没入傾注没我熱中夢中熱心鋭意無我夢中緊褌きんこん一番凝る耽る浸る骨折る骨を折る根を詰める目の色を変える心血を注ぐ手を尽くす身を投ずる身を挺する体を張る明け暮れる

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精選版 日本国語大辞典 「背水の陣」の意味・読み・例文・類語

はいすい【背水】 の 陣(じん)

  1. ( 「史記‐淮陰侯伝」の「信乃使万人先行出、背水陣、趙軍望見而大笑〈略〉信曰、此在兵法、顧諸君不察耳、兵法不曰、陥之死地而後生、置之亡地而後存」と見える韓信の故事から ) 陣立の名。背後に、河川・湖海などを控えて陣を布(し)くこと。退けば水に溺れるところから、味方に決死の覚悟で戦わせる陣立。転じて、一歩も退くことのできない絶体絶命の立場で事にあたることにもたとえる。
    1. [初出の実例]「前に川有て後に大山峙(そばだち)たれば、〈略〉韓信が兵書を褊(さみ)して背水(ハイスイ)の陣を張しに違へり」(出典太平記(14C後)三二)

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故事成語を知る辞典 「背水の陣」の解説

背水の陣

川や湖、海などを背にした陣立て。もう逃げ場はないと覚悟した上で、ものごとに取り組むことのたとえ。

[使用例] 躊躇する場合で無い。背水の陣と出かけなくてはならぬ[徳冨蘆花*思出の記|1900~01]

[使用例] 不定期運命の前に背水の陣をしいているより他に法はない[竹山道雄*樅の木と薔薇|1947]

[由来] 「史記わいいんこう伝」に記録されている、漢王朝の創業に大きな功績を挙げた将軍かんしん作戦から。紀元前二〇四年、漢のりゅうほうこうとが、中国の覇権をかけて争っていたときのこと。韓信は、三万の兵を率いて、三〇万と称するちょうの国の軍隊と戦うことになりました。このとき、彼は、兵法の常識からは外れた、川を背にした不利な場所に陣を敷きます。そして、納得しない部下たちに向かって、「趙軍を破ったあとで会食しよう」と、早くも勝利宣言。その布陣を見て笑っていた趙軍でしたが、いざ戦ってみると、勝利は韓信の手中に帰しました。戦勝祝宴で、どうしてあんな作戦を採ったのかと問われた韓信は、「我々は急ごしらえの軍隊だから、兵士たちを死にものぐるいにさせないと勝利は得られない」と答えたのでした。

[解説] ❶「背水の陣」を敷いた時点で、彼の目にだけは勝利への道筋が見えていた、というのがなんとも格好いい。用兵の天才、韓信の面目躍如といったエピソードです。❷とはいえ、韓信だって、内心では勝てる確信はなかったはず。現在でも、成功するかどうかはともかく、失敗したらこれで終わりという覚悟でものごとに取り組む場合に、よく用いられます。❸「千慮の一失敗軍の将は兵を語らずも、この戦いから生まれた故事成語です。

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ことわざを知る辞典 「背水の陣」の解説

背水の陣

河川や湖などを背にした決死の陣立て。転じて、一歩も退けない絶体絶命の立場で事にあたることのたとえ。

[使用例] 不定期の運命の前に背水の陣をしいているより他に法はない[竹山道雄*樅の木と薔薇|1947]

[解説] 漢の名将韓信が趙の軍隊と戦ったとき、大軍をわざと有利な山の砦から降ろし川を背に不利な陣立てで戦わせ、死中に活を見出す兵法の極意により敵を破ったという「史記―淮陰侯伝」に見える故事によることば。

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