わが国の病理学者である吉田富三が1943年(昭和18)に発見した実験的肉腫。o(オルト)‐アミノアゾトルエンで飼育したシロネズミに、亜ヒ酸カリアルコール溶液を塗布することによって発生させることができたもので、肉腫細胞が腹腔(ふくくう)液中で個々に遊離した状態で増殖することを特徴とする。動物の腹腔内に移植されたとき、腫瘍(しゅよう)性腹水の形成が強く、その腹水だけで累代移植ができる移植腫瘍を一般に腹水腫瘍とよぶが、吉田肉腫は、こうした累代移植が可能で、簡単な手技で移植ができ、移植率もきわめて高い。このため、悪性腫瘍の細胞学的研究、突然変異に絡む染色体の解析ばかりでなく、悪性腫瘍に対する化学療法剤の開発、なかんずく抗癌(がん)剤のスクリーニング(選別)に利用されるなど、腫瘍研究の進歩に著しく貢献した。腹水1立方ミリメートル中に約100万個の腫瘍細胞が認められ、塗抹標本では、腹腔内組織球より大きく、核は偏在し、楕円(だえん)形ないし腎(じん)形を示しており、鮮明な核仁を有し、細胞質にアズール顆粒(かりゅう)が花冠状をなして存在するという特徴をもっている。この腫瘍細胞の起源に関して、単球、肝内皮細胞、体腔上皮などが想像されている。
[渡辺 裕]
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…病理学者,癌学者。吉田肉腫の発見者。福島県生れ。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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