君主論(読み)クンシュロン(英語表記)Il Principe

デジタル大辞泉 「君主論」の意味・読み・例文・類語

くんしゅろん【君主論】

《原題、〈イタリアIl Principe》政治思想書。マキャベリ著。1513年ころ成立。1532年刊。当時のイタリアの政治的混乱を解決するため、強力な君主による独裁的政治の必要性を提言する。政治を宗教や倫理から独立させて、国家理性の理論として確立し、近代政治学の基礎を築いた。

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精選版 日本国語大辞典 「君主論」の意味・読み・例文・類語

くんしゅろん【君主論】

  1. ( 原題[イタリア語] Il Principe ) 政治思想書。マキアベリ著。一五一三年頃成立、三二年刊。小国分立、外国の干渉によるイタリアの政治的混乱を収拾するため、ライオンの力とキツネのずるさを持つ君主の独裁的統治の必要を説いた。政治を宗教、倫理から切り離して考察し、近代政治学の樹立に寄与した。→マキアベリズム

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「君主論」の意味・わかりやすい解説

君主論
くんしゅろん
Il Principe

イタリア・ルネサンスの政治思想家マキャベッリの代表的作品。彼が政治から遠ざけられていた1513年に執筆され、のちにメディチ家ロレンツォに献呈された。1532年に公刊されたが、1559年ローマ教皇庁によって禁書目録に加えられた。全体は26章からなり、君主的権力や支配権力(スタート)の獲得、維持、拡大をテーマとしている。まず、君主的権力の種類から説き起こし、新たに成立した支配権力にその焦点を絞っていく。被治者がいかなる体制の下にあるかに対応して統治政策を検討したのち、権力の獲得方法とそれぞれの場合における権力維持のための方策が検討される(6~11章)。このうち、チェーザレ・ボルジャの統治政策をたたえた第7章は有名である。ついで権力の獲得や維持の中核をなす軍事力が論じられる(12~14章)。当時の傭兵(ようへい)制度を批判し、自己固有の軍事力の整備を説いた主張は有名である。そして15章から23章にかけて、君主の統治政策の要諦(ようてい)が個別的に論じられる。この部分はそれまでの理想的君主像をラディカルに否定し、たとえば、君主に対する臣民の側の恐怖感の必要、残忍な行為の有用さ、信義誠実原則の有名無実化などを主張する点で悪名高い部分である。この部分は後年マキャベリズムとして恐れられ、批判の的になっていった。最後の3章は現実のイタリアの政治的没落の原因を分析し、それからの脱出方途を模索する。彼はここでイタリア諸国の誤った政策を批判し、運命の力を過大視する立場を戒め、自らの提唱する諸方策に従うことこそ、イタリアの政治的救済の道であることを力説している。

佐々木毅

『池田廉訳『君主論』(中公文庫)』『佐々木毅著『マキアヴェッリ』(1978・講談社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「君主論」の意味・わかりやすい解説

君主論 (くんしゅろん)
Il principe

マキアベリの主著で,1513年から翌年にかけて執筆された。彼は君主論という古代以来の伝統的スタイルにのっとりつつ,まったく新しい内容を展開した。まず新しい君主に関心を向け,そうした君主の権力がいかにして獲得され,維持されるかを吟味する。その際,それまでの正義と法の担い手としての君主像とは違って,軍事力に圧倒的な比重をおき,しかも場合によってはいかなる非道徳的手段をも辞さないという君主像が出てくる。こうした君主によって,人間の悪性にもかかわらず,平和と安全を可能にする強い君主が可能であると考えたのであった。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「君主論」の意味・わかりやすい解説

君主論【くんしゅろん】

マキアベリの主著。《Il principe》。1513年から翌年にかけて執筆,1532年刊。ウルビノ公ロレンツォ・デ・メディチにささげられたもの。国内分裂と外国干渉の中で混乱したイタリアを救うべき道として,君主は権力への野心と武人的な決断力をもち,徹底した権謀術数的統治手段をとるべきだと説く。その政治的見解からマキアベリズムの語も生じ,近代政治学の古典とされる。
→関連項目ボルジア

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「君主論」の意味・わかりやすい解説

君主論
くんしゅろん
Il Principe

イタリアの政治思想家 N.マキアベリの著作。 1512年から 13年にかけて書かれ,32年に出版された。君主に権謀術数を教えたものとして知られているが (→マキアベリズム ) ,逆に J.-J.ルソーのように,これによって人民に君主の本質を教えようとしたと理解する者もある。なお,本書に示された政治に対する現実的な考察は,現代政治学の先駆としての意義をもっている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「君主論」の解説

『君主論』(くんしゅろん)
Il Principe

マキァヴェッリの著。1513年頃執筆。ウルビーノ公ロレンツォ・デ・メディチにささげられ,イタリアの覇者として外国人の占領や混乱からイタリアを救うべき新君主の権謀上の心得を説いた。国家理性を認めつつ政治を宗教道徳から切り離したその政治論は,マキァヴェリズムの語を生み,近代政治学の先駆とされる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「君主論」の解説

君主論
くんしゅろん
Il Principe

イタリアの政治学者・歴史家マキァヴェリの著書
1532年刊。イタリアの混乱と外国軍の干渉に対して,国家目的の達成が支配者の任務であり,君主は個人倫理に制約されるべきではないという現実主義的政治論を説く。そのために君主は「獅子の力」と「狐の狡智」を兼ね備えねばならないとした。その理論は,後世にマキァヴェリズムと呼ばれ,激しい論争をまき起こした。

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世界大百科事典(旧版)内の君主論の言及

【マキアベリ】より

…1512年共和国がメディチ家によって打倒されると,マキアベリは危険人物として職を追われ,フィレンツェ郊外に隠棲を余儀なくされた。有名な《君主論》(1532)をはじめ,《リウィウス論》(1531),《マンドラゴラ》(1524)などの作品はこの不遇の時期に執筆された。この間も彼はイタリアをめぐる政治情勢に関心を向け,また《君主論》にみられるようにメディチ家への接近を開始する。…

※「君主論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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