イタリア・ルネサンスの政治思想家マキャベッリの代表的作品。彼が政治から遠ざけられていた1513年に執筆され、のちにメディチ家のロレンツォに献呈された。1532年に公刊されたが、1559年ローマ教皇庁によって禁書目録に加えられた。全体は26章からなり、君主的権力や支配権力(スタート)の獲得、維持、拡大をテーマとしている。まず、君主的権力の種類から説き起こし、新たに成立した支配権力にその焦点を絞っていく。被治者がいかなる体制の下にあるかに対応して統治政策を検討したのち、権力の獲得方法とそれぞれの場合における権力維持のための方策が検討される(6~11章)。このうち、チェーザレ・ボルジャの統治政策をたたえた第7章は有名である。ついで権力の獲得や維持の中核をなす軍事力が論じられる(12~14章)。当時の傭兵(ようへい)制度を批判し、自己固有の軍事力の整備を説いた主張は有名である。そして15章から23章にかけて、君主の統治政策の要諦(ようてい)が個別的に論じられる。この部分はそれまでの理想的君主像をラディカルに否定し、たとえば、君主に対する臣民の側の恐怖感の必要、残忍な行為の有用さ、信義誠実原則の有名無実化などを主張する点で悪名高い部分である。この部分は後年、マキャベリズムとして恐れられ、批判の的になっていった。最後の3章は現実のイタリアの政治的没落の原因を分析し、それからの脱出の方途を模索する。彼はここでイタリア諸国の誤った政策を批判し、運命の力を過大視する立場を戒め、自らの提唱する諸方策に従うことこそ、イタリアの政治的救済の道であることを力説している。
[佐々木毅]
『池田廉訳『君主論』(中公文庫)』▽『佐々木毅著『マキアヴェッリ』(1978・講談社)』
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マキァヴェッリの著。1513年頃執筆。ウルビーノ公ロレンツォ・デ・メディチにささげられ,イタリアの覇者として外国人の占領や混乱からイタリアを救うべき新君主の権謀上の心得を説いた。国家理性を認めつつ政治を宗教道徳から切り離したその政治論は,マキァヴェリズムの語を生み,近代政治学の先駆とされる。
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…1512年共和国がメディチ家によって打倒されると,マキアベリは危険人物として職を追われ,フィレンツェ郊外に隠棲を余儀なくされた。有名な《君主論》(1532)をはじめ,《リウィウス論》(1531),《マンドラゴラ》(1524)などの作品はこの不遇の時期に執筆された。この間も彼はイタリアをめぐる政治情勢に関心を向け,また《君主論》にみられるようにメディチ家への接近を開始する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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