改訂新版 世界大百科事典 「周産期医学」の意味・わかりやすい解説
周産期医学 (しゅうさんきいがく)
perinatal medicine
周産期における母児の医学的・生物学的問題を研究する学問をいう。具体的には,正常あるいは異常な環境における胎児の生理や病態生理,分娩に伴う胎児の生理的変化,子宮内因子や出生後の外的因子に影響される新生児の医学が研究の対象となる。特に日本の胎児学,新生児学の進歩はめざましい。主として小児科医による新生児学と新生児医療の進歩は,新生児死亡率を世界最低のレベルにまで引き下げ,子宮外胎児といわれる超未熟児でさえ後遺症なく育てられるようになった。また産科医を中心とする胎児学は,胎児の生理,病理の解明を目ざして広く研究が行われ,胎児の健全な発育と正常の出生に大きく貢献した。しかし,個体にとって胎児期と新生児期とは連続したものであることはいうまでもない。小児を健全に育てるための努力は,子宮内の胎児期から始めなければならない。そこで,胎児学と新生児学を共通の視点から研究することになり,周産期医学という学問にまとめられたのである。なお周産期とはどの期間を指すのか,はっきりしたきまりはない。周産期死亡という言葉があるが,これは妊娠28週以後生後1週までの胎児・新生児死亡と定義されている。しかし,周産期医学の対象とする期間はこれでは狭過ぎるので,妊娠12週,すなわち器官形成の終わった時期から生後28日までとする考えが提唱されている。
執筆者:奥山 和男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報