和剤局方(読み)わざいきょくほう(その他表記)Hé jì jú fāng

改訂新版 世界大百科事典 「和剤局方」の意味・わかりやすい解説

和剤局方 (わざいきょくほう)
Hé jì jú fāng

中国医学の処方集。《太平恵民和剤局方》というのが正式の書名であるが,通常《和剤局方》または《局方》と略して呼ばれる。宋時代の代表的な処方集の一つで,初版は北宋末の大観年間(1107-10)に徽宗皇帝の命を受けて陳師文らが刊行した。この書は和剤恵民局で調製して一般に売り出した薬剤のための処方集である。民間の処方を集めて構成したといわれ,大部分前代の書からの引用文という中国の多くの処方集とは違い,宋時代に創製ないし使用された処方を多く含むという意味で重要である。この書に収載されている処方のうち,どれがどの程度常備されて使用されたかということは不明であるが,この書がよく利用されたことは確かである。初版以後たびたび刊行されたが,そのたびに改訂されたため,初版本の姿は不明である。この書の処方はのちに売薬に移行した。中国だけでなく日本も含めて,後世に大きな影響を与えた書である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「和剤局方」の意味・わかりやすい解説

和剤局方
わざいきょくほう

中国、宋(そう)代に出版された漢方処方箋(しょほうせん)集。『太平恵民和剤局方』が正名。徽宗(きそう)の時代に、当時各地の薬局で使用されていた局方(処方集)の誤りを訂正するために、陳師文(ちんしぶん)らに校訂を命じ、五巻本として出版された勅撰(ちょくせん)本。さまざまな病状別に用いられる処方を記し、さらに各処方についての細かい使用目標を詳述した実用書で、収載された処方箋は十分に吟味されたものばかりで、宋代以後も大いに利用された。わが国でも鎌倉から室町時代にかけて広く用いられ、多くの医家が利用した。現在、流通している家庭薬のなかにも、本書に記された処方箋を基本とするものが多い。なお現在の薬局方という名称は本書の題名に由来している。

[難波恒雄・御影雅幸]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和剤局方」の意味・わかりやすい解説

和剤局方
わざいきょくほう
Ho-chi-chü-fang

中国宋代の徽宗の勅命によって選ばれた一種の国定処方集。南宋以後しばしば増訂されたために多くの異本があるが,最初刊本は大観年間 (1107~10) に陳師文,裴完元,陳承らが撰述したものである。

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