男女の和合をつかさどるという神。性にかかわる信仰はしばしば性器崇拝のかたちをとることもあり,淫祠として権力によって排撃・弾圧されることも多かった。
和合の神として一般によく信仰されたのは,聖天(しようてん)とよばれる大歓喜天で,象頭人身の2神が抱き合っている姿で表される。これはインドのガネーシャ神に起源をもつものであるが,ラマ教においても男女2神が抱擁交接している像が多くつくられまつられている。これらは男女両性の結合をもって宇宙の根本原理とする思想に基づいたものといえる。日本の真言密教の一流である立川流や近世中期に隆盛した富士講の一派不二道の中でも,日常的倫理とからめつつ男女二原理の統合を軸に教義の体系が整えられている。
男女の愛の成就を祈る信仰も古くからあり,日本古代の文献には,女が男の愛を得るための信仰のことがみえている。《新猿楽記》に,夫に相手にされなくなった老妻が〈本尊の聖天〉〈持物(じぶつ)の道祖(どうそ)〉や〈五条の道祖(さえ)〉〈東寺の夜叉〉をまつり,〈野干(きつね)坂の伊賀専(いがとうめ)が男祭(おまつり)〉や〈稲荷山の阿小町(あこまち)が愛法(あいほう)〉に祈るとあり,また《梁塵秘抄》に〈遊女(あそび)の好むもの〉として〈男の愛祈る百大夫〉があげられている。このような信仰は整備された教義教説の体系をもたないままに,近代まで推移したのであるが,たとえば真言密教の神である愛染(あいぜん)明王が近世には恋愛の神として信仰を集めたように,仏教や神道の神仏がその対象とされたこともあった。なお文化・文政(1804-30)のころ,中国の婚礼のときにまつられたという蓬頭笑面,緑衣を着て左手に鼓,右手に棒を持つ〈和合神〉が,男女の和合と縁結びの神として流行したことがあった。
執筆者:村下 重夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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