中国の宗教結社。南宋(なんそう)、高宗(こうそう)の紹興(しょうこう)年間(1131~62)初めに、呉郡(ごぐん)(蘇州(そしゅう))の延祥院(えんしょういん)の僧侶(そうりょ)茅子元(ぼうしげん)が創立した白蓮菜(びゃくれんさい)という教団に始まり、現代まで続いた。茅子元は天台宗の教法をまねて、「円融四土(えんにゅうしど)の図」「晨朝(しんちょう)の礼懺(らいさん)文」「偈歌(げか)四句」「仏念五声」をつくり、信徒には戒律、とくに不殺生戒(ふせっしょうかい)を守るように勧めた。自らを白蓮導師と称し、信徒を白蓮菜とよんだ。白蓮菜というのは、信徒が不殺生戒を守って食肉せず、菜のみを食べたからである。この教団は民衆の信徒が増え、教勢が盛んになったため弾圧され、茅子元は流罪となった。この弾圧以後、南宋時代には白蓮菜はマニ教や白雲菜(はくうんさい)(白雲宗)とともに邪教異端の代表とされた。白蓮教は初めは阿弥陀(あみだ)信仰であったが、元(げん)末ころから弥勒仏(みろくぶつ)の下生(げしょう)によってこの世に繁栄がもたらされるという弥勒教と融合し、弥勒信仰を中核とする教団へと変化した。明(みん)・清(しん)の時代にも民衆と結び付いた白蓮教は、時の為政者から邪教として禁圧されたが、しばしば反乱を起こし、清朝の1796年から9年間にわたって続いた白蓮教徒の乱は有名である。清朝以後も、白蓮教はさまざまな分派を有しながら宗教的秘密結社として活動し、近代中国における秘密結社の大半は白蓮教に関係している。
[小林正美]
『相田洋著『白蓮教の成立とその展開』(『中国民衆反乱の世界』所収・1974・汲古書院)』▽『野口鐵郎著『白蓮教社の変容をめぐって』(『山崎先生退官記念東洋史学論集』所収・1967)』
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中国における民間の仏教的宗教結社。南宋の初め阿弥陀(あみだ)信仰により茅子元(ぼうしげん)が始めたが,やがて呪術的傾向が著しくなり,宋末から元代にかけ邪教として弾圧された。元末には,やがて弥勒仏(みろくぶつ)が救世主として現われるという弥勒下生(げしょう)の信仰と結びつき,貧窮の民衆を信徒とし,紅巾(こうきん)の乱が起こった。明代にも邪教として禁止されたが,秘密結社として明末各地で反乱を起こし,清代になっても結社は存続し,18世紀末大規模な反乱が起こった。反乱は1796年より9年間にわたり,湖北,河南,陝西(せんせい),四川の各省に及んだ。ただゲリラ戦を続けたにすぎなかったが,清朝の官兵よりも民間の義勇軍の郷勇(きょうゆう)が鎮圧に力を尽くし,清朝の衰退を示した。
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