立川流(読み)タチカワリュウ

デジタル大辞泉 「立川流」の意味・読み・例文・類語

たちかわ‐りゅう〔たちかはリウ〕【立川流】

真言密教一派陰陽道おんようどうとの混合により成立した流派。性的な結合を唱える邪教とされた。平安後期、武蔵国立川陰陽師が唱え、文観もんかんが広めて大流行したが、慶長以後ほとんど絶えた。

たてかわ‐りゅう〔たてかはリウ〕【立川流】

江戸時代宮彫みやぼの一派。宝暦(1751~1764)のころ、信濃国諏訪の立川和四郎が創始したといわれる。

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精選版 日本国語大辞典 「立川流」の意味・読み・例文・類語

たちかわ‐りゅうたちかはリウ【立川流】

  1. 〘 名詞 〙 平安末期、真言密教と陰陽道・民間信仰とが混合してできた宗派真言宗醍醐三宝院流の祖勝覚の弟子仁寛に受法した武蔵国立川の陰陽師某が唱え、醍醐寺の座主文観の努力によって一時盛んに行なわれたが、慶長(一五九六‐一六一五)以後、ほとんど絶えた。天地森羅万象金剛界胎蔵界との二つに分け、これを男女に配し、男女の交会をもって即身成仏の秘術と称し、多くの信者を集め、男女が雑魚寝をして荒行をしたという。そのため邪教として弾圧された。

たてかわ‐りゅうたてかはリウ【立川流】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、彫刻装飾を多用した建築の流派の一つ。明和一七六四‐七二)の頃、信濃国(長野県)諏訪の人、立川和四郎富棟が始めたもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「立川流」の意味・わかりやすい解説

立川流 (たちかわりゅう)

平安時代末,崇徳天皇の護持僧をつとめた醍醐山東院の仁寛(にんかん)を流祖とする真言密教の一流。密教の教理を曲解して,天地の森羅万象を金剛界と胎蔵界に分け,これに男女を配して大日如来にあて,男女の交合をもって即身成仏の秘法とし,煩悩即菩提の極致であると説く。仁寛は女犯によって伊豆に流されたが,同じころ,真言勧修寺流を受けた四天王寺の別当真慶(しんぎよう)も盛んに女犯の是認を説いた。鎌倉末期,後醍醐天皇の護持僧文観(もんかん)は真慶の印信書籍を筆写し,仁寛秘法の印契を会得して立川流を大成,秘法を天皇に伝えて寵を得たというが,その真否は定かでない。だが,中世の天台・真言両宗では清僧は少なく,女犯や男色が僧侶のなかで盛んだった。この風潮の裏に立川流の流布があり,それがこの期の僧院文芸にも多くの影響を与えている。他方,真言正統派はこの邪説を破るため,その典籍を破棄するなどの努力をくりかえし,また近世になると,幕府の僧侶の生活規制もきびしくなり,この流は邪教とされて,その勢力はほとんど絶えた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「立川流」の意味・わかりやすい解説

立川流
たちかわりゅう

平安末期、真言(しんごん)密教に陰陽道(おんみょうどう)、民俗信仰を交えて興起した真言宗の一派。立河流とも書く。発生の地、武蔵(むさし)国(東京都)立川に由来する。開祖は京都・醍醐(だいご)寺勝覚(しょうかく)の弟子仁寛(にんかん)。彼が1113年(永久1)伊豆に流罪になったのを機会に東国、北越に広まる。南北朝時代に弘真(こうしん)(1278―1357)は立川流を大いに広めたが、1335年(建武2)高野山衆徒(こうやさんしゅと)の非難を受け、甲斐(かい)国(山梨県)に流された。高野山の宥快(ゆうかい)(1345―1416)が立川流を批判した『宝鏡鈔(ほうきょうしょう)』は著名である。立川流は真言宗の実践目標である即身成仏(そくしんじょうぶつ)の実現が男女の性関係による大楽の実践にありとしたので、邪教の刻印を受けた。農耕儀礼の要素も含み、実体は不明のままである。

[宮坂宥勝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「立川流」の意味・わかりやすい解説

立川流
たちかわりゅう

真言宗から派生した特異な一派。始祖は醍醐の勝覚の弟子仁寛。 12世紀初めに興った。説は,両部の大日如来を男女に見立て,理知不二を男女交合のことと解し,「淫欲是道」を唱え,淫乱なことを行うことを即身成仏の最高の境地となすことであった。この思想は一時は広く流伝したとされる。

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