四徳(読み)しとく

精選版 日本国語大辞典「四徳」の解説

し‐とく【四徳】

〘名〙
① 易で、天地の間に存在して万物を化育する四つの自然の道。春・仁にあたる元、夏・にあたる、秋・義にあたる利、冬・智にあたる貞の四つ。
※春鑑抄(1629)仁「夫れ人と云ものは、天より性を生みつくるに、その性に仁・義・礼・智の四徳(シトク)のそなはらぬものはなひぞ」 〔易経‐乾卦〕
② (「周礼‐天官・九嬪」による) 婦人のもつべき四つの徳。婦徳(貞順)・婦言(辞令)・婦容(婉娩)・婦功(糸麻)。四行。四教
万葉(8C後)五・七九四右詩序文「紅顔三従長逝 素質四徳永滅」 〔後漢書‐皇后紀伝〕
③ 仏語。涅槃(ねはん)の四つの徳、すなわち、・楽・我・
※太平記(14C後)四〇「尊儀速に三界苦輪を出で、直に四徳楽邦に到り給ひけんと哀なりし事共也」 〔翻訳名義集‐七〕
儒教で、人間のふみ行なうべき四つの徳。・弟・・信。〔大戴礼‐衛将軍父子〕
⑤ 水のもっている四つの徳。また、その徳をもっている水。
※宴曲・宴曲集(1296頃)四「海は四徳を湛へつつ連檣を万里に廻らしめ」 〔尸子‐君治〕
西欧でいう四つの徳。英知・勇気・節制正義

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デジタル大辞泉「四徳」の解説

し‐とく【四徳】

《「易経」乾卦から》天地自然が万物を育てる四つの道。元(春で仁にあたる)・こう(夏で礼にあたる)・利(秋で義にあたる)・貞(冬で知にあたる)。
《「礼記」昏義から》婦人のもつべき四つの徳。婦徳・婦言・婦功・婦容。四行。四教。
《「書経」尭典から》聖王が備えたという四つの徳。欽・明・文・思。
仏語。涅槃ねはんの四つの徳。常・楽・我・浄。
西洋で、英知・勇気・節制・正義の四つの徳。
儒教で、人のふみ行うべき四つの徳。孝・弟・忠・信。

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世界大百科事典内の四徳の言及

【仁義】より

…孔子をつぐ孟子は,人は生まれながら善なる性の端緒を備えもつと考え,また,君主が仁政を行って民に恩沢をもたらすことこそ政治であると考えた。そこで仁義礼智の四徳から,博愛をいう仁と,正義をいうとを並べて道徳の基本理念とし,仁義を説くことによって,人が自己の人間性を完成させることを期待した。【串田 久治】 日本でも,戦国時代の武将にとっては政治規範として,江戸時代の士道論においては社会的秩序の規範として仁義がとらえられた。…

【善】より

…仁が必要条件,礼はそれを前提としての十分条件であった。儒教の公理ともいうべき孟子の性善説では性(人間の本性)の内容を仁義礼智の四徳(漢代,信を加えて五常という)として仁を第一にあげ,朱子は仁とは〈天地に在っては坱然(おうぜん)として物を生む(生きしめる)の心,人に在っては温然として人を愛し物を利するの心〉といい,五常は一個の仁の細目にほかならないとした。仁は天地の生々の徳の人間における発現だというのである。…

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