宗門人別改帳(読み)しゅうもんにんべつあらためちょう

改訂新版 世界大百科事典 「宗門人別改帳」の意味・わかりやすい解説

宗門人別改帳 (しゅうもんにんべつあらためちょう)

近世領主が村ごとに作成させた戸籍簿的な帳簿宗門人別帳ともいう。幕領では毎年3月に新たに作成して代官所へ提出すべきものとされた。家ごとに戸主筆頭に家族成員,奉公人,下人などが記載されている。各人ごとに檀那寺が記され,その寺の証印があり,これによってキリシタンでないことが証明されている。戸主名の脇にその家の持高が記される場合も多い。また戸主名の頭に〈百姓〉〈水呑〉などの身分も記されている。帳面末尾にその村の戸数,人口合計(男女別区分)が記される。宗門人別改帳は,キリシタン改めと人口調査を兼ねた村方の基本帳簿であり,村の寺院はキリシタンでないことを村民各自に証明することを通じて大きな権力を持った。

 同帳の初見は,1634年(寛永11)長崎平戸町,横瀬浦町の〈人数改之帳〉とされている。これは宗門人別改帳とは題されていないが,住民一人一人につきその所属する寺が書かれている。しかし,一般的にはこの時期にはまだ宗門改めと人別改めとは別々であった。キリシタン禁制のための宗門改手形類は寛永(1624-44)後半から作成されたようである(1635年初見説がある)。一方,人別改めは夫役徴収の必要からこれより早く施行されたようで,小倉藩領(細川氏)では1609年(慶長14)に人付帳,11年に人畜改帳が作成されている(家数人馬改帳)。宗門人別改帳の一般的成立は遅く71年(寛文11)以降で,この年幕府は,各藩にも宗門人別改帳の作成を命じている。宗門人別改帳は以後ずっと作成されたが,毎年新調されることは少なかった。1871年(明治4)戸籍法が作られ,廃止された。
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百科事典マイペディア 「宗門人別改帳」の意味・わかりやすい解説

宗門人別改帳【しゅうもんにんべつあらためちょう】

江戸時代,村(町)ごとに作成,領主に提出された戸口の基礎台帳。宗門人別帳・宗旨人別帳宗門改帳などともいう。元来は別々に行われていたキリシタン禁圧のための宗門改と,領主による夫役負担能力把握を目的とする人別改とが,寛文期(1666年―1673年)以降,複合化し制度化された。幕府領の場合には家ごとに戸主・家族成員・奉公人・下人などの名・年齢,各人ごとの檀那寺を記し,キリシタンでないことを証明する檀那寺の印が押され,戸主には身分・持高・牛馬数なども併記されるのが一般的であるが,藩により形式は様々であった。1872年に壬申戸籍が作成されるまで,現在の戸籍台帳の役割を果した。
→関連項目古文書寺請制度

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「宗門人別改帳」の解説

宗門人別改帳
しゅうもんにんべつあらためちょう

宗旨人別帳・宗門改帳・家別帳・宗門帳とも。江戸時代,領主が村・町ごとに各家の人別に宗門改を行い作成した帳簿。1613年(慶長18)のキリスト教禁止令以降,キリシタン摘発のため宗門改が実施された。当初の宗門改帳の多くはキリシタンではないことを証明した寺請証文を編集したもの。一方,各領主は江戸初期から領民支配の必要性により戸口調査を行い,人別帳を作成した。1671年(寛文11)幕府はこの人別帳をもとに宗門改をすることを命じ,これを機に全国的に原則として毎年作成されるようになった。それにともない寺檀制度も確立。この帳簿は戸籍台帳として機能し,1871年(明治4)の戸籍法の制定により近代戸籍へと引き継がれた。

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世界大百科事典(旧版)内の宗門人別改帳の言及

【古文書】より

…村明細帳は領主交替を作成動機とするものが多い。宗門人別改帳は夫役負担の人別帳と宗門改帳が合成されて成立したが,34年(寛永11)長崎平戸町,横瀬浦町〈人数改之帳〉が最古の原型であり,65年(寛文5)宗門改帳の作成が命じられ,71年以降毎年作成されることとなったのである。記録古文書学【大野 瑞男】。…

【寺檀制度】より

…寺僧が,その檀家家族個々について,キリシタンや禁制宗派たる日蓮宗不受不施派などの信徒でないことを証明する寺請を行うことによって,身元,身分を証明した(寺請制度)。このことを直接命じた法令はないが,1671年(寛文11)に従来行われていた宗門改めを,人別帳を利用して行うように指令したことにより,宗門人別改帳作成が制度化されて寺檀関係は制度として成立した。その前提には,近世初頭から広範に成立した民衆の家と,それらを檀家とする村々の寺との寺檀関係の展開があり,一方,キリシタン禁教政策を江戸幕府が明確にすると,幕府や諸藩は寺檀関係を利用して宗門改めを行ったことがあげられる。…

【宗門改め】より

…島原の乱と鎖国によってキリシタンがほとんど根絶されると,かえって宗門改めは強化された。1640年には幕府に宗門改役が置かれ,64年(寛文4)には諸藩に宗門奉行の設置が命ぜられ,次いで71年には人別帳を作成してこれに宗門改めを行う宗門人別改帳制度が実施され,宗門改めの方法が確立した。このような宗門改め制度は,キリシタン禁圧を口実とする民衆統制であり,領民を把握し身分制的支配を確立しようとする戸籍制度の性格を強くもつもので,以後江戸時代全期間を通じて実施された。…

【代判人】より

…江戸時代の宗門人別改帳における家筆頭人(名前人という)が,15歳未満または女性の場合には成年男子の後見人を必要とし,これを代判人という。一般には親族であるが,奉公人等の場合もある。…

【村方文書】より

…これは土地台帳とともに村内の階層関係を知るのに便利である。 領主による人身支配のための基本文書として,一般に宗門人別改帳と呼ばれる戸籍簿がある。これは村内の各家ごとに家族成員名と年齢を記し,寺院が各人につきキリシタンでない旨の証印を押したものである。…

※「宗門人別改帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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