日本大百科全書(ニッポニカ) 「国有企業(企業形態)」の意味・わかりやすい解説
国有企業(企業形態)
こくゆうきぎょう
state-owned enterprise
国家が出資している企業、または政府の管轄下にある企業。英語の頭文字をとってSOEと略称されることもある。政府所有会社government-owned corporation、国営企業、国営事業などの用語は国有企業とほぼ同義語として使われるが、国が資本の一部を出資している企業を国有企業とよぶのに対し、国が全額出資している企業を国営企業として区別することもある。産業保護、エネルギー・食糧安全保障、財政上、国防上の見地から、鉄道、航空、通信、電力、石油、放送、タバコ、アルコール類、金融、郵便などに関する事業が国有化される例が多い。
西側先進国では1970年代後半のイギリスのサッチャリズムや、1980年代のアメリカのレーガノミクスで「小さな政府」を志向する経済政策が相次いで進められ、国有・国営企業の民営化が進んだ。日本でも中曽根康弘(なかそねやすひろ)政権の「民活」路線で、日本国有鉄道、日本専売公社、日本電信電話公社などの民営化が進み、その後も特殊法人改革や郵政民営化などで民営化や株式会社化が進んだ。ただし、民営化しても政府が株式を保有する場合は、広義の国有企業にあたり、法令上、政府が経営権を握っている場合が多い。
中国では、中央政府だけでなく、地方政府が設立した企業も国有企業としている。1998年に当時の首相朱鎔基(しゅようき)が国有企業改革を最優先課題に掲げて以来、人員過剰や設備老朽化のため赤字続きでも破綻(はたん)しない国有企業の再編・淘汰(とうた)が経済的に大きな課題となっている。また国有企業が中小企業や不動産会社に高金利で融資する「委託貸付け」行為が、銀行を経由しない中国のシャドーバンキング(影の銀行)を生む要因の一つとして問題視されている。
[編集部]