日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会主義市場経済」の意味・わかりやすい解説
社会主義市場経済
しゃかいしゅぎしじょうけいざい
中国共産党の第14回党大会(1992年10月)の政治報告で、1990年代の改革と建設の主要任務の一つとして提起された体制。社会主義のマクロ調整のもとで市場経済に資源分配の基礎的な役割を果たさせるというもので、共産党が正式に市場経済を認知したのはこれが初めてである。「市場経済が即資本主義であるとはいえず、社会主義にも市場はある」という最高実力者鄧(とう)小平の考えがその基礎となっており、これが党の方針として確定されたことは、保守派に対する改革派の勝利が決定的になったことを示している。1993年3月の第8期全国人民代表大会第1回会議で改正された憲法でも、その第15条に「社会主義市場経済を実行する」という文言が明記され、従来の計画経済体制は放棄されることとなった。しかし市場経済が浸透し、高度経済成長が続くなかで、国有企業の不振、貧富の格差の拡大、幹部の腐敗といったひずみが顕在化し、「政治は一党独裁、経済は市場経済」という体制に限界が見え始めている。
[渡邊幸秀]