特定の階級の利益を代表するのではなくて、国民全体の利益を代表すると主張し活動する政党。しかし政党とは本来、党派的なものであり、社会の階級的・階層的・地域的特殊利害の追求者・代弁者の集団として、その本質から党派性をぬぐい去ることはできない。
議会制民主主義の発展とは、政党のもつ党派性の鋭さを緩和して、全国民的利害という共通の土俵を認めさせる過程であった。17世紀のイギリス革命を通じて18世紀に確定される二大政党制は、政党の党派性を公党の枠内に収め、階級政党を国民政党化する内容のものであった。産業革命後の労働者階級の政治的進出は、19世紀のイギリスにおいては、保守党と自由党の古い国民政党の枠組みに吸収されていたが、20世紀に入るとともに、その枠組みは突破されることになる。しかし、新しく出現した労働党も、その階級的立場を誇示しながら「陛下の反対党」として国民政党の枠組みに収まり、議会制社会主義の立場を堅持する野党、あるいは政権党としての役割を果たすに至っている。
わが国においても、第二次世界大戦前の政友会や民政党が国民政党性を競い合う形で政党政治を形成し、その伝統は第二次世界大戦後の保守、中道、革新の諸党派の対抗関係に継承された。自民党も旧日本社会党もその他の諸党も、特定の階級的・階層的立場への立脚を特性としながら、同時に、経済政策、外交政策、福祉政策などの諸分野で、どれだけ全国民的観点において評価される国民政党としてのあり方を示すかを、他党との競合の内容としている。
[高橋彦博]
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【政党の類型】
現代政党は,その目標や構造的性格などで,いくつかのタイプに分けられる。
[国民政党,階級政党,宗教政党]
その一つが〈国民政党〉と〈階級政党〉の区別で,国民政党が特定の階級にかかわりなく国民全体の基盤のうえに立ち,国民的利益の実現をめざすのに対し,階級政党は労働者・農民を主要基盤とし,その利益を代表し,社会主義社会の建設を志向する。日本の自民党は〈特定の階級,階層のみの利益を代表〉する階級政党ではなく〈国民全般の利益と幸福のために奉仕〉する国民政党,民社党は〈特定の階級の利害のみを代表する階級政党〉ではなく〈社会集団間の利害の対立とともに国民的利害の共通性をも認める国民政党〉を標榜したのに対し,55年体制下の社会党は労働者階級を中核とする〈階級的大衆政党〉として党の性格を規定していた。…
※「国民政党」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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