190以上の国と地域で、子供の生命と健やかな成長を守るために活動している国連機関。略称UNICEF(ユニセフ)。第二次世界大戦後の混乱したヨーロッパと中国における児童の食糧、医薬、衣服の緊急の必要を満たすために、1946年12月11日、国連総会によって設立された国連国際児童緊急基金United Nations International Children's Emergency Fundが母体である。同機関はその頭文字をとってユニセフとよばれる暫定機関であったが、1953年に国連総会はこれを常設機関とすることを決議し、ユニセフの略称はそのままで、名称から「国際」と「緊急」を外し、国連児童基金と改称した。この間、活動の中心も何百万人に及ぶ途上国の児童の栄養不良・病気・低識字率の問題に移り、長期的児童養護計画への援助を行うようになった。
ユニセフはその活動の指導原則として、国連総会が1959年11月20日に採択した「国連児童権利宣言」を掲げており、同宣言に具体化された基本的権利をすべての児童が享有する機会の実現を目標としている。1989年に子どもの権利条約が採択されてからは、これを支持している。また2000年に採択された国連ミレニアム宣言をもとにまとめられた「ミレニアム開発目標」の実現に向かって、働きかけている。ユニセフの途上国に対する協力は、児童養護サービスの計画や拡大への援助、職員の教育・訓練の強化のための基金の提供、教科書用の紙・医薬品・清水ポンプなどの必需物資・施設の援助など多岐にわたっている。1976年には医療・栄養・教育のもっとも基本的サービスさえ欠いている児童のために「基礎的サービス戦略」が採択された。長期的計画に対する援助のほかに、災害・内乱・感染症発生などの緊急時に母子に対する救済措置がとられる。ユニセフの活動資金の3分の2は各国政府からの自発的醵金(きょきん)で、残りは民間の寄付、ユニセフのクリスマス・カードの売上げなどでまかなわれている。本部はニューヨーク。ジュネーブにヨーロッパ本部があるほか、コペンハーゲンに供給センター、フィレンツェに研究所、ブリュッセル(対西欧)と東京(対日本・韓国)に資金調達および政策決定者の連絡を行う事務所がある。そのほかに、中・東欧および独立国家共同体、東アジア・太平洋、南アジア、東部・南部アフリカ、中東・北アフリカ、米州・カリブ海諸国、西部・中部アフリカの世界7地域に地域事務所が置かれ、さらに各国に現地ユニセフ事務所がある。1965年にノーベル平和賞を受賞した。
[芹田健太郎]
(最上敏樹 国際基督教大学教授 / 2007年)
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第二次世界大戦で犠牲となった児童の救済を目的として,1946年に国際連合によって創設された国連国際児童緊急基金が起源。当初,ヨーロッパの児童を対象に,食料援助や衣料援助を行った。その後,名称を国連児童基金に変更し(略称はユニセフのまま),開発途上国の児童の救済に重点を移し,給食,BCG注射による結核予防対策など医療や健康衛生の援助を行っている。本部はニューヨーク。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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