安全な航海に必要な世界の海図、海域や水路の境界、名称、測量・観測技術などの国際的な統一基準をつくる国際機関。略称IHO。もともと海域の名や境界などは歴史や文化に根ざしており、国や地域ごとにさまざまであったが、貿易や国際交流の活発化に伴い、不統一では航海に危険が生じるとして1921年に統一基準づくりを目ざす国際水路局が発足した。この国際水路局を前身として、1967年、国際水路機関条約に基づいて設立されたのが国際水路機関である。本部はモナコにあり、2013年(平成25)3月時点で日本を含む81か国が加盟している。
各国が海図を作成する際に指針・参考とする図誌『大洋と海の境界』Limits of Oceans and Seasを1929年から作成しており、現在は1953年作成の第3版が使われている。5年ごとに総会を開き、第4版作成に向けた改訂作業を続けているが、日本海やペルシア湾などの名称について周辺国の主張が異なり、完成に至っていない。日本からは海上保安庁海洋情報部や外務省などが参加している。
日本列島とユーラシア大陸に囲まれた海域の名称は、『大洋と海の境界』初版から第3版まで一貫して日本海(Sea of Japan)が唯一の名称として使用されている。しかし韓国政府は国連加盟後の1992年、国連地名標準化会議で日本海は植民地政策によって日本から押し付けられた名称であり、韓国で使われている「東海」(East Sea)に改めるか、「東海」を日本海と併記するよう要求した。これに対し日本政府は、日本海は18世紀から19世紀のヨーロッパの世界地図にも表記されており、歴史的、国際的に定着した名称であると反論した。国際水路機関は2002年、当事国間で名称について係争があるとして、日本海という名称をいったん白紙にする指針案を提示したが、日本が抗議し、複数加盟国からも同指針案に対する疑問や説明要求が出たため、指針案は撤回された。その後、韓国は2007年、2012年の国際水路機関総会などで、日本海を「東海」とするよう引き続き要求している。また北朝鮮は国連地名標準化会議などの場で日本海を「朝鮮海」「朝鮮東海」とするよう主張している。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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