地ビール(読み)じびーる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地ビール」の意味・わかりやすい解説

地ビール
じびーる

特定の地域で営まれている小規模な醸造所(マイクロブルワリーmicro brewery)が、少量生産するビール総称原料の種類やその組み合わせ風味を決定づける熟成方法などで、少量生産ならではの特徴を盛り込み、味や香りなどに独自の工夫を凝らしたものが主流である。日本では1994年(平成6)の規制緩和による酒税法改正で、ビール製造免許に必要な年間最低製造量が、2000キロリットルから60キロリットルに引き下げられたことから、全国各地でビール醸造業に参入が相次ぎ、地ビールと総称されてブームになった。2003年(平成15)に250社以上あった地ビールメーカーは、2010年ごろには180社前後にまで落ち込んだが、その後は、課題になっていた販路面で、個性的なビールを取りそろえた居酒屋やバーなどが増え、地域限定商品などとしてコンビニエンス・ストアでの取り扱いが進んだことから、人気は定着している。

 また、近年クラフトビールcraft beerという名称の商品に人気が集まっている。イギリスドイツなどの醸造所には、クラフトビールとよばれる、その醸造所のビール職人ならではの製法を生かしたビールが存在している。地ビールと明確に区別することはむずかしいが、海外の個性的な製法や味わいを取り入れたり、少量生産でありながら全国的な販売ルートで展開したりしている点で、従来の地ビールの名前にかえて、クラフトビールと称されている。2014年9月にはクラフトビール大手のヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)と麒麟麦酒キリンビール)が業務・資本提携を結んだ。世界的にビールの市場規模が縮小傾向にあるなかで、商品の多様化や顧客開拓の目的で、クラフトビールの醸造所に対して提携買収を決断する大手ビール会社が増えている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例