中国,清朝の土地税。田賦ともいう。清朝の租税は,ほかに関税・塩税・雑税があり,清末には新税も増設されたが,これらはすべて間接税で,直接税は地丁銀だけであった。清朝は,明代の地銀(地賦)・丁銀(丁賦)2本立て租税を引きついだが,人頭税である丁銀(16~60歳の壮丁に課税)は,官僚層の免除特権の乱用,富裕地主の丁数ごまかし,貧困農民の未納増加などの諸要因から,その徴収が困難になった。そこで清朝は,1713年(康煕52)から盛世滋生人丁を新設して丁額・丁銀額を固定化し,16年広東省において丁銀を地銀の付加税として合併徴収することとしたのを最初として,20年代(雍正1-7)に各省の地丁銀がつぎつぎに成立した。ただ台湾は40年代,貴州省は70年代におくれて実施され,山西省の一部地方は清末まで実施されずにおわった。丁銀を地銀に付加する方法は,さまざまな方法があるが,一般的には地銀1両につき丁銀若干を付加する方法がとられた。地丁銀の成立によって,明代以来の租税銀納の趨勢がいっそう顕著になるとともに,中国古来の伝統的租税体系の1本の柱であった人頭税が消滅したことの歴史的意義はきわめて大きい。
執筆者:北村 敬直
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中国、清(しん)朝の土地税。田賦(でんぷ)ともいう。清朝の租税はほかに関税、塩税、雑税があるが、これらはすべて間接税で、直接税は地丁銀だけであった。清朝は明(みん)代の地銀、丁銀二本立て租税を引き継いだが、人頭税である丁銀(16~60歳の壮丁に課税)は、官僚層の免除特権の乱用、富裕地主の丁数ごまかし、貧困農民の未納増加などの諸矛盾から、その徴収が困難となった。そこで1713年から盛世滋生人丁(せいせいじせいじんてい)を設けて丁額、丁銀額を固定化し、16年広東(カントン)省において丁銀を地銀の付加税として合併徴収することとしたのを最初として、1720年代に各省の地丁銀が次々に成立した。ただ台湾は1740年代、貴州省は1770年代と遅れて実施され、山西省の一部地方は清末まで実施されずに終わった。丁銀を地銀に付加する方法はさまざまであるが、一般的には地銀1両につき丁銀若干を上乗せする方法がとられた。地丁銀の成立によって、明代以来の租税銀納の趨勢(すうせい)がいっそう徹底するとともに、中国古来の伝統的租税であった人頭税が消滅したことの歴史的意義は大きい。
[北村敬直]
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清代の税制。丁銀を地銀のなかに繰り込んで徴収した税法。形式的ながら,古来人丁(じんてい)に課せられていた税を廃止した点で,画期的な改革とされる。康熙(こうき)末年広東省で実施され,雍正(ようせい)年間を通じ全国各省に普及施行された。清初では明末の一条鞭法(いちじょうべんぽう)を受け,課税基準を地銀と丁銀に置いていた。しかし壮丁把握の困難や諸種の弊害から,1711年の編審壮丁を最後に,以後の増加人丁への課税を廃止する盛世滋生人丁制(せいせいじせいじんていせい)を13年以後実施した。この結果丁銀額が固定化し,地銀への繰り込みが可能となったのを前提として,地丁銀制へ移行した。
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… 財政は,基本的には明制をうけついでいるが,ただ明末の重税を廃して整理された。租税は地丁銀・塩課(塩の専売収入)・関税(内地関税)の3本柱からなる。なかでも地丁銀は80%台から18世紀でも70%台を占め,最重要な租税であった。…
…秦・漢以後は,戸口を按じて徴収する税を賦といい,それと別に丁男を徭役に徴発したので,賦と役ははっきり区別されるようになった。下って明代に一条鞭法が施行されてから,戸口を按じて徴発する徭役分を銀両で徴収するようになり,つづいて清初には丁男から徴収する丁銀を田地から徴収する田賦に繰り入れるにいたり,賦役と賦税は同義となり,内容は地丁銀にほかならなくなった。すなわち賦役の語は,おおまかにいって一つは徭役,二つは田賦すなわち土地税と徭役の両者を意味する意義の変遷があったのである。…
※「地丁銀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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