台地上の平坦(へいたん)地に直径1メートル、深さ3メートルほどの竪(たて)坑を垂直に掘り、その底面からさらに横に奥行3メートル前後、高さ130センチメートル前後の玄室を掘り込んだ横穴墓。玄室の天井は寄棟(よせむね)造や切妻(きりづま)造の屋根形を呈するものが多く、中に棺を置く。一般に地表にはなんらの標識ももたないが、円墳の封土下に地下式横穴がつくられることもある。宮崎県六野原10号横穴では眉庇付冑(まびさしつきかぶと)、短甲(たんこう)、獣形鏡、管玉(くだたま)、刀剣、鉄鏃(てつぞく)、鍬先(くわさき)、馬具、土師器(はじき)など多彩な副葬品がみられ、この種の横穴が5世紀代までさかのぼることがわかるが、多くのものは古墳時代後期に属し副葬品も少ない。宮崎県中部以南から鹿児島県にかけて濃密に分布するが、他の地域にもみられる。熊本県球磨(くま)地方から鹿児島県北部にかけて分布する地下式板石積(いたいしづみ)石室墓や、薩摩(さつま)半島南端部の立石土壙(たていしどこう)墓とともに九州南部の三つの特徴ある墓制の一つで、古文献にみえる「隼人(はやと)」の墓と推測する説もある。同じ構造のものが中世にもみられる。
[久保哲三]
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…遺体あるいはそれを納めた棺は,そのまま床下,屋外,野外,洞窟,岩陰などに土葬することもある。また,崖や斜面にうがった横穴(よこあな)やそれに続く墓室(中国後漢代の崖墓(がいぼ),日本古墳時代の横穴),垂直に掘り下げてから水平方向に掘った横穴(南ロシア青銅器時代の地下式横穴墓,宮崎・鹿児島県の地下式横穴),地下の坑道の壁面にうがった横穴(ローマの初期キリスト教徒の墓所であるカタコンベ)に納めることもある。石,塼(せん),木などで構築した墓室内に棺を納めることも多い(石室,塼室墓)。…
…副葬品は横穴式石室のそれと共通するものが多く,単純に石室を構築したものより低い階層の産物とはいえない場合も少なくない。 なお,九州南部の日向・大隅地方には,地下式横穴と呼ばれる地方色豊かな古墳が分布する。地表面より深さ2m前後の竪穴を掘り,その底から横向きに羨道と玄室とを営んだもので,天井部を屋根形やドーム形に成形し,羨道や竪穴の入口部を石や粘土で閉塞する。…
※「地下式横穴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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