地中送電(読み)ちちゅうそうでん(その他表記)underground power transmission

改訂新版 世界大百科事典 「地中送電」の意味・わかりやすい解説

地中送電 (ちちゅうそうでん)
underground power transmission

地中に埋設した送電線電力を送ること。架空送電線に対し地中送電線が使用されるのは,安全,地域環境との調和,経済性などの面から総合的に優れているか,架空線の施設が法規上の制限,用地上の制約,関係官庁の指示,需要家との契約,協定上の制約などの理由によりできない場合であるが,地中送電線は多回線を同一ルートに敷設でき,暴風雨,雷などの天候および周辺の火災などの影響を受けず安全性が高いなどの利点がある。地中送電線路は気中終端接続部を除けば電気的に露出した絶縁は使用されず,耐用年数として想定された期間(一般に40年)は使用電圧,異常電圧など系統に生ずる電圧では破壊しない絶縁が必要であり,主としてCVケーブル,OFケーブルが,またとくに大電流を必要とする場合はSF6ガスを絶縁物とする管路気中ケーブルが使われる。

 地中送電線路の施設形態は,〈電気設備技術基準〉によりすべてケーブルを使用することが定められており,かつ管路引入式,暗きょ(洞道)式,または直接埋設式によらねばならない。直埋式の場合,ケーブルの防護にコンクリート製トラフを使用し,トラフとケーブルの間隙かんげき)に砂を充てんしふたをかぶせるのがふつうである。ケーブル接続部はコンクリート板や鉄平石などで防護するか,必要に応じマンホールかハンドホールを設ける場合がある。管路式はヒューム管,鋼管,FRP管,石綿セメント管などの管材をあらかじめ複数本胴締めし,管路とマンホールをつくっておき,マンホールよりケーブルを管路部に引き入れ,マンホール内でケーブルを接続する。暗きょ式は地中に暗きょ,またはふたつき開きょを構築し,床上,あるいは棚上にケーブルを敷設するもので,管路式でケーブル数が多すぎ相対発熱により送電効率が著しく低下するような場合に採用される。

 地中送電線路の送電容量はケーブルの許容電流で定まる。許容電流とは,ケーブルに裸通電したときに生ずる導体損,誘電体損,シース損などのために上昇する導体温度上昇と基底温度との和が,ケーブル絶縁体の最高許容温度を超えない電流をいい,線路の計画設計に当たっては採用ケーブルの導体交流特性,絶縁体の誘電率,誘電損失特性,シースボンド方法などのほか,ケーブル埋設周囲の熱放散を十分検討する必要がある。
送電 →電力ケーブル
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百科事典マイペディア 「地中送電」の意味・わかりやすい解説

地中送電【ちちゅうそうでん】

地下に埋設した電力ケーブルによる送電方式。故障が少なく信頼性があり,都市の美観の点でも有利であるが,建設費や修理費が高い。欧米の市街地では広く用いられているが,日本では東京・大阪などの大都市周辺の変電所間で採用されている程度。11〜77キロボルトの送電電圧が使用されている。
→関連項目送電線

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世界大百科事典(旧版)内の地中送電の言及

【送電】より

…すなわち離隔距離(気中ギャップ)を決める開閉サージと碍子個数を決める汚損が,送電線の大きさを決める主要因になっている。
[架空送電と地中送電]
 送電線路には大気を絶縁に利用している架空送電と,それ以外の絶縁材料を用い通常地下に敷設される地中送電に大別される。架空送電は簡素堅牢な構造をもち,地中送電に比べてはるかに経済的であるため,都市中心部など架空の採用が困難な場合以外は架空が用いられている。…

※「地中送電」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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