地域の労働組合が中心となり、農民、市民、中小商工業者と提携して、自らの課題と共通課題の実現のため、使用者団体や県・市町村当局など地方権力組織に対して行う共同闘争。地域闘争は、1947年(昭和22)占領軍により二・一ストが禁止され、ゼネストや全国的な統一闘争ができなくなったのを契機に、これを打開するために編み出されたものである。産別会議傘下の全逓信(ていしん)労組(全逓)が同年6月の臨時大会(松江)で「最低賃金制の確立」「地域的生活給の確立」という二本立て賃金要求を決議し、その具体的戦術として決めたのが最初である。地域闘争は、48年から49年にかけて経済安定九原則、ドッジ・ラインによる企業整備などに対する産業防衛闘争と結合して全国的な拡大をみたが、その後、占領軍・政府の弾圧や、労働組合活動家の先鋭的な街頭行動もみられ、民主化同盟(民同)勢力の発生もあってしだいに衰退していった。
労働組合運動と地域闘争の関係についていえば、労働組合の闘争は全国統一闘争や産業別闘争として展開される限り、地域問題や他階層との共闘に基づく要求実現は、かならずしも問題とされない。したがって労働組合が職場闘争を基礎に地域産業、労働条件、国民生活面の課題に対処することは、労働組合運動に幅をもたせ、闘争態勢の強化につながる。なお、地域闘争の思想は、1953年以降総評などが展開した地域ぐるみ闘争に受け継がれている。
[吉田健二]
労働組合が中心となって地域のもろもろの要求を掲げ,地域労働者を結集するとともに,農・漁民,市民,中小商工業者とも連携し,地域的な共同闘争を行うこと。第2次大戦後の日本では,全逓信従業員組合が二・一スト禁止後の賃金ストップ・首切り企業整備に反対して,1947年秋に職場闘争を強化しつつ地域闘争を展開したのが最初である(〈全逓〉の項参照)。その後地域闘争は〈地域人民闘争〉とよばれる権力闘争に転化され,政治主義的誤りと占領軍・官憲の弾圧のために衰退したが,53年以降のデフレ期の人員整理反対闘争のなかで〈ぐるみ闘争〉方式に発展させられ,再び華々しく闘われた。この方式は,家族ぐるみ・地域ぐるみの組織をつくり,その闘争によって,企業の危機が叫ばれると闘争体制が崩れるという企業別組合の弱点を補おうとするものであった。しかし,こうした地域闘争は高度経済成長期に入るとともに影をひそめ,春闘方式が定着するなかでほとんど消滅した。73年秋の第1次石油危機後の低成長時代になって再度重視されはじめたが,減量経営・企業倒産に反対するごく一部の争議を除いて,必ずしも十分な取組みが行われているとはいえない。日本の労働運動の企業主義的な弱点を克服するうえで地域闘争の果たす役割は大きく,その発展が期待されるところである。
執筆者:上井 喜彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1947年の二・一ストで全国的統一闘争を禁止された労働組合が,翌年にかけ,職場闘争を基礎に地域の諸要求と結合して地方権力との闘いも目ざした闘争戦術。片山哲内閣の1800円ベース反対の労働組合は,47年6月の全逓松江大会で地域闘争戦術を決定,8月,神戸中央郵便局で〈集団欠勤〉戦術を採用,以後各地に波及したが,これを〈山猫スト〉とする政府の警告で一応鎮まった。しかし11月,全逓松本大会は地域の諸要求と結合,農民,市民との共闘で地方権力と対決する地域人民闘争戦術を採択,共産党も12月の第6回大会でこの戦術を定式化した。…
※「地域闘争」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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