固体を大気中に放置するとき,その固体が空気中の水分を吸収し,その水分に固体が溶け出す現象。たとえば粒状の水酸化ナトリウムを大気中に放置すると,初めはすりガラスのようであったその粒の表面が,瞬間的につやを帯びる。これは,水酸化ナトリウムが空気中の水分を吸い取って溶け,粒の表面が水溶液で覆われる現象である。水の吸収や移り具合を水蒸気圧の大小関係でとらえてみると,ある物質の飽和水溶液の水蒸気圧P1が,それと接触している大気中の水蒸気の分圧P2よりも小さい場合(P1<P2)に潮解の現象が起こることがわかる。これは,大気中から水分が固体表面とそこにある飽和溶液中へ移り,溶液濃度を低下させようとするためである。不揮発性の物質を溶かした水溶液においては,濃度が低くなればその水蒸気圧はより高く(水分が大気中へとびだしやすく)なる性質があるので,大気中の水蒸気圧に等しくなるまで,溶液の濃度は自発的に低くなろうとする。すなわち,大気中から水分が,固体表面にある飽和水溶液中へ移っていき,さらに固体を溶かしつづけることになる。ちなみにNaOHの飽和水溶液の水蒸気圧はおよそ1.6mmHg(25℃)であり,同温度の水の蒸気圧は23.8mmHgである。アルカリ金属の水酸化物,カルシウム,マグネシウムの塩化物と硝酸塩,アルミニウム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅などの塩化物,硝酸塩,過塩素酸塩などは,著しい潮解性を示す。潮解しやすい物質は水に溶けやすいが,その逆は成り立たない。潮解を防ぐには,乾燥した空気中に保存するか,大気を遮断すればよい。
執筆者:橋谷 卓成
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飽和溶液と平衡にある蒸気圧が、同温の大気の飽和水蒸気圧よりも小さい場合には、水蒸気は固体物質に吸収されてやがて不飽和溶液となる。この現象を潮解という。塩化マグネシウム(にがりの主成分)などは潮解性化合物の好例である。
潮解性の化合物は例外なく水によく溶けるものであり、吸湿性を利用して乾燥剤に用いられるものも少なくない(塩化カルシウム、過塩素酸マグネシウムなど)。低温においては大気中の飽和水蒸気圧も著しく小となるので、潮解性の著しいはずの結晶が安定に固体として存在することもある。南極のドライバレーにおいて、鳥居鉄也(とりいてつや)、小坂丈予(おさかじょうよ)によって発見された「南極石」は、塩化カルシウム六水和物である。いかに乾燥した条件下にあるかが推測できる。
[山崎 昶]
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固体化合物が大気中の水蒸気を吸収して,終局的にその化合物の不飽和水溶液ができる現象.すなわち,飽和溶液の示す水蒸気圧が,そのときの大気中の水蒸気圧より小さい場合に起こり,しかも例外なく固体は水に易溶性のものである.たとえば,潮解性の塩として知られている塩化カルシウムの飽和水溶液の蒸気圧は,室温において(5~7)×102 Pa であって,これは通常の大気中の水蒸気圧より低い.
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