多数国間投資保証機関(読み)たすうこくかんとうしほしょうきかん(英語表記)Multilateral Investment Guarantee Agency

日本大百科全書(ニッポニカ) 「多数国間投資保証機関」の意味・わかりやすい解説

多数国間投資保証機関
たすうこくかんとうしほしょうきかん
Multilateral Investment Guarantee Agency

国際商業会議所(ICC)および経済協力開発機構(OECD)の提唱をもとに、国際復興開発銀行IBRD世界銀行)が1985年10月の総会において採択した多数国間投資保証機関を設立する条約に基づいて、1988年4月12日に発足した国際機構。略称MIGA(ミガ)。

 MIGAは、経済成長、貧困削減、人々の生活向上を支援するための新興経済国向け外国直接投資を推進することを目的としている。そのために、外国投資家に対し、開発途上国への投資を行う際に障害となる送金制限、収用、契約不履行、戦争内乱などの非商業的危険から生ずる損失に対する直接保険、再保険などの保証を行うとともに、投資環境改善のための政策・助言サービスを行っている。

 加盟資格は、世界銀行の全加盟国およびスイスに与えられており、2009年時点で先進国25、開発途上国150の175か国が加盟している。主要な組織として、各加盟国が任命する総務によって構成される総務会、業務全般について責任を有する理事会、総裁(世界銀行総裁が兼任)、事務局がある。本部ワシントンに置かれている。

 MIGAの授権資本は10億SDR(国際通貨基金=IMFの特別引出権)で、世界銀行への出資比率に応じて加盟国の出資額が決定される。MIGAは1988年に発足して以来、2010年10月時点で、100か国を超える開発途上国で980のプロジェクトに224億ドルの投資保証引受けを行った。

横川 新]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多数国間投資保証機関」の意味・わかりやすい解説

多数国間投資保証機関
たすうこくかんとうしほしょうきかん
Multilateral Investment Guarantee Agency; MIGA

発展途上国への投資促進や累積債務国への企業進出を支援し,民間企業が負う,戦争などの非商業的なリスクを担保する国際機関。国連専門機関の一つ。1988年6月に世界銀行グループ(→世界銀行)の構成機関の一つとして発足した。各国政府の投資保険制度が引き受けの対象外にしている投資の保証を行ない,海外投資保険制度が未整備な国に対する企業の海外投資を支える役割をもつ。保証対象は,(1) 投資受け入れ国が通貨交換および送金に対して課す制限に起因するリスク,(2) 投資の所有権または支配権,もしくは投資からの実質的な利益を外国投資家から剥奪する結果となる,投資受け入れ国の立法または行政上の行為および不作為に起因する損失リスク,(3) 投資家との契約に関する政府の支払義務否認,(4) 武力紛争および騒乱に関するリスクなどである。MIGAが単独で保険を引き受けるほか,再保険や協調保険を受け入れる機能ももっている。保証業務以外にも,発展途上国の投資環境を整備するためのコンサルティングなども請け負っている。2018年現在の加盟国数は 181。

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