日本大百科全書(ニッポニカ) 「多硫化ゴム」の意味・わかりやすい解説
多硫化ゴム
たりゅうかごむ
polysulfide rubber
一般式-(R-Sx)-n(R:炭化水素基など、x:2~4)で表され、硫黄(いおう)を主鎖に含む構造をもった合成ゴムである。ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称はT。歴史的にもっとも古いゴムの一つで、1929年、アメリカでチオコールの商品名で工業化された。代表例はビス(2-クロロエトキシ)メタンと多硫化ナトリウムの重縮合によって合成され、縮合度によって液状から固体状に至る多硫化ゴムができる。酸化亜鉛や有機過酸化物‐金属酸化物によって架橋されたゴムは、耐油性と耐候性が優れている。液状ゴムは室温加硫ができるので航空機、船舶、車両などのシーリング材や土木建築のコーキング材として使われるほか、エポキシ樹脂改質材、ガスケットや印刷ロール用などの用途がある。固体ゴムは樹脂の耐衝撃性改善、天然ゴムやスチレン・ブタジエンゴムの耐油性改善などに用いられる。
[福田和吉]