多硫化ゴム(読み)たりゅうかゴム(その他表記)polysulfide rubber

改訂新版 世界大百科事典 「多硫化ゴム」の意味・わかりやすい解説

多硫化ゴム (たりゅうかゴム)
polysulfide rubber

多硫化アルカリと有機二塩化物の縮合反応によって得られる合成ゴム。1931年,アメリカのチオコール・ケミカル社からチオコールThiokolという商品名で生産,販売されたのが始まりで,現在でもチオコールという名称は多硫化ゴムの代名詞のように使用されている。多硫化ゴムの最大の特徴は耐油性に富むことで,この性質を利用して塗料ホース,印刷用ロールなどの耐油性工業部品に用いられている。また,水分やガス透過性が低いこと,耐候性,耐オゾン性に富むことなどから,航空機高層ビル船舶などの窓のシーリング材などにも使用される。原料の多硫化アルカリとしては二~四硫化ナトリウム,有機二塩化物としてはジクロロエタン,ジクロロプロパン,ジクロロジエチルホルマールなどが使用される。多硫化ゴムの加硫には酸化亜鉛酸化鉛などの金属酸化物が使用され,これらをゴムと混合,加熱すると加硫ゴムが得られる。このほか多硫化ゴムには室温硬化型の液状ゴムがあり,これは分子量1000~8000程度の低重合度ポリマーで,分子鎖両末端に-SH基がついている。これに過酸化鉛などを混合することにより分子鎖の伸長が進みゴム状となる。ゴム中の硫黄含有率は35~85%で,含有率の高いほど耐油性は高いが耐寒性が低下する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「多硫化ゴム」の意味・わかりやすい解説

多硫化ゴム
たりゅうかごむ
polysulfide rubber

一般式-(R-Sx)-n(R:炭化水素基など、x:2~4)で表され、硫黄(いおう)を主鎖に含む構造をもった合成ゴムである。ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称はT。歴史的にもっとも古いゴムの一つで、1929年、アメリカでチオコールの商品名で工業化された。代表例はビス(2-クロロエトキシ)メタン多硫化ナトリウムの重縮合によって合成され、縮合度によって液状から固体状に至る多硫化ゴムができる。酸化亜鉛や有機過酸化物‐金属酸化物によって架橋されたゴムは、耐油性と耐候性が優れている。液状ゴムは室温加硫ができるので航空機、船舶、車両などのシーリング材や土木建築のコーキング材として使われるほか、エポキシ樹脂改質材、ガスケットや印刷ロール用などの用途がある。固体ゴムは樹脂の耐衝撃性改善、天然ゴムやスチレン・ブタジエンゴムの耐油性改善などに用いられる。

[福田和吉]

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百科事典マイペディア 「多硫化ゴム」の意味・わかりやすい解説

多硫化ゴム【たりゅうかゴム】

有機2塩化物と多硫化アルカリとの縮合反応で得られる合成ゴム。有機2塩化物としてはジクロロエタン,ジクロロプロパンなどが,多硫化アルカリとしては二〜四硫化ナトリウムが使われる。耐油性,耐溶剤性にすぐれ,水分やガスの透過性が低く,耐候性,耐オゾン性にも富む。航空機・船舶・高層ビルの窓のシーリング材,航空機用燃料タンク内張り,ロケット燃料粘結剤,エポキシ樹脂変性剤などに利用。
→関連項目合成ゴムチオコール

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多硫化ゴム」の意味・わかりやすい解説

多硫化ゴム
たりゅうかゴム
polysulfide rubber

主として有機ハロゲン化合物と多硫化アルカリとの縮合反応などにより得られる合成ゴム。耐油,耐溶剤,耐老化,耐オゾンなどの各性質がすぐれており,ガソリンその他の油類用のホース,印刷用ロール,弾性シーラント,塗料,接着剤など各方面にその特長を生かして利用されている。

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