「ゆめうらない」とも読み、夢判断ともいう。夢の内容をなにかの予兆と考え、のちに起こるはずの事件を知ろうとする技術である。「夢枕(ゆめまくら)に顕(た)つ」というのも、神仏や人などの霊が夢に出現して意志表示をするものと考え、その意志を推測しようとするものである。信心深い人や巫女(みこ)や覡(おとこみこ)などは、ある結果の原因を知るため、あるいは将来起こることの予兆を得るため、積極的に夢をみようとすることもあった。夢判断には直接連想と間接連想とがある。歯の欠けた夢をみると身内の人が死ぬなどというのは、「欠ける」という点だけに焦点をあてた直接連想であり、洪水の夢をみると火事にあうなどは、火事―放水―洪水と結び付けた間接連想である。また正夢(まさゆめ)とか逆夢(さかゆめ)とかいって、都合のよいように解釈する場合がある。一般によい夢とされているのは「一富士、二鷹(たか)、三茄子(なすび)、四葬式、五火事」であるが、もっと複雑なものもある。「夢で火事をみるとき、煙だけみるのはよいが、火をみると縁起が悪い。ぱっと消えると、なお悪い。しかし火事の夢をみると、御馳走(ごちそう)が食える」。最後の部分は炊(た)き出しを連想しているのである。正月の初夢には、江戸時代は宝船の木版刷りを売る者があり、枕の下に敷いて寝た。悪い夢をみたときは、「バクバク」と唱えて獏(ばく)という想像上の動物に夢を食わせるとか、真っ先にナンテンの木に話して木を揺すぶると、難を転じることができるなどという。
[井之口章次]
夢をみる人の霊魂は肉体を遊離し、神々や死者と会ったりし、彼らからの啓示を受けるという夢観念は、歴史上にも、また現在も多くの文化に存在し、そこでは夢に未来を占う予言的な性質が認められている。
西洋では、聖書に「ヤコブの夢」をはじめとした夢見の話があるほか、古代ギリシアではアスクレピオスやアポロンの神殿に参籠(さんろう)して夢をみると病気が治ると信じられていた。2世紀にはアルテミドロスの『夢占い』によって夢の解釈が集大成され、その後も多くの夢占本が現れている。
日本でも法隆寺の夢殿に聖徳太子が夢占をするために入ったという伝承があるほか、仏のお告げが夢のなかに現れるという夢告(むこく)の観念が平安時代から存在している。また正月二日の初夢に、とくに予知力を認めて、江戸時代以来、宝船の絵が売られ、悪夢は宝船とともに川に流し、吉夢ならば宝船を神仏に献じたりした。
夢占はほとんどすべての民族にあるが、その際にいわゆる「正夢(まさゆめ)」のようにこれから起こることをそのまま夢みる場合と、夢のなかでのできごとを象徴としてとらえてそれを解釈する場合がある。後者の場合その解釈は民族によって大いに異なる。たとえばニューギニアのダリビ人がアリの夢をみると、その数の多さから、それを多産の夢として解釈するように、夢のなかの事物はなんらかの類似をもとに現実のできごとへと変換される。その解釈は、特定の職能集団が形成されて行われる民族もあれば、個人的に自分の夢を解釈する民族もある。
[上田紀行]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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