大原郷(読み)おおはらごう

日本歴史地名大系 「大原郷」の解説

大原郷
おおはらごう

郷名は「小右記」治安元年(一〇二一)三月二八日条に「頼明朝臣進賀茂上社司解状并大原郷刀禰等解文、社司申御社并神館修造、但神館屋等不葺檜皮、又大原郷刀禰等不承引祭雑事、是延暦寺四至定未有一定之故、大原刀禰等所申如此、具在解状等、見了(返カ)給」とみえ、大原郷の刀禰らが賀茂社司と争っていることが大納言藤原実資に報告されている。刀禰らは大原郷がいずれ延暦寺領となるであろうと考え、延暦寺の四至がまだ定まっていないことを理由に、賀茂祭の雑事を務めないと主張している。しかし多くは「大原」と記され、「大原郷」の名が一般的に用いられるのは、郷村制の発達する室町時代以降である。応永一六年(一四〇九)の妙法院文書に「大原郷上野并西庄」とあるのが早い例であるが、この例や「銭主賦引付」(内閣文庫蔵)天文一五年(一五四六)の大原郷戸寺沙汰人等申状のように、上野うえの戸寺とでらなどの村名に郷名を冠する例が多い。


大原郷
おおはらごう

和名抄」東急本は「於保波良」(オホハラ)と訓ずる。弘仁一〇年(八一九)二月一六日の近江国大原郷長解(東京大学所蔵文書)によれば、大原郷戸主秦浄継戸口の同姓有伍倍の畠地・墾田などが浅井あざい湯次ゆすき郷戸主従八位上的臣吉野戸口中嶋連茂子に売渡されている。天長九年(八三二)四月二五日の近江国大原郷長解写(正親町伯爵家旧蔵文書)にも「原郷戸主秦継麿戸口建部縄公」が浅井郡湯次郷戸主正六位上的臣吉野の戸口である中嶋連大刀自古に墾田を売渡し、承和三年(八三六)三月二四日の近江国大原郷長解案(同文書)にも「坂田郡大原郷戸主秦」が「浅井郡湯次郷戸主下的臣吉野戸口中嶋連大刀自」に墾田を売渡したとある。


大原郷
おおはらごう

「和名抄」高山寺本に「大原」と記すが、訓を欠く。刊本は「於保波原」と訓じるので、「おほはら」と称していたと思われる。同名の郷は因幡・出雲・播磨美作大隅の諸国にもみられる。「和名鈔諸国郡郷考弁」は「弥富村の大字鈴野川の字地に大原と云ふが是ならん歟」とするが、現須佐すさ弥富やどみ駅家うまや(小川駅)の郷域とみることが妥当と思われるから適切ではない。「日本地理志料」は地勢を示した郷名とみて、その範囲を「亘生雲、生雲中、生雲西、生雲東、蔵目喜、二ノ野、地福、上地福、下地福、鷹巣諸邑」と述べ、現阿武郡阿東あとう町の地福じふく生雲いくも篠生しのぶ地区の一帯とみる。


大原郷
おおはらごう

「和名抄」諸本とも訓を欠く。「法隆寺本古今目録抄」に「因幡国気多郡大原郷、宇都美之里」とある。遺称地はない。「因幡民談記」は「鹿野ノ奥ニ上原・下原・原井手ナド云フ処アリ」として現鹿野しかの町の南部にあて、「因幡志」は「因幡民談記」のあげる「上原」等の位置や地名に誤りがあるとして、「和名抄」気多郡諸郷の記載順から坂本さかもと(現気高町)の東、高草たかくさ小沢見こぞみ内海うつみ(現鳥取市)辺りに比定している。


大原郷
おおはらごう

「和名抄」所載の郷。高山寺本・東急本ともに訓を欠く。平城宮跡出土木簡のうち、「(表)播磨国赤穂郡大原郷大原□」「(裏)五保秦酒虫赤米五斗」と記されるものが造酒司跡から出土しており、赤米が酒造に用いられたとみられる。また「(表)赤穂郡大原郷秦造吉備人丁二斗秦造小奈戸丁三斗」「(裏)(并カ)庸一俵」と「赤穂郡大原郷戸主秦造吉備人(下略)」はいずれも貢進物付札で、郷内に渡来系氏族秦氏の存在を示している。


大原郷
おおはらごう

「和名抄」所載の郷。諸本とも訓を欠くが、オオハラであろう。「出雲国風土記」に記載がなく、大原郡の屋裏やうち郷・佐世させ郷・屋代やしろ郷の各一部を割いて置かれた郷というが未詳。安元二年(一一七六)二月八日の八条院所領目録(山科家文書)に出雲国大原と記される。


大原郷
おおはらごう

「和名抄」所載の郷。諸本とも訓を欠くが、他国では近江国坂田郡・長門国阿武郡などの同名郷に「於保波良」の訓(いずれも東急本)がある。郷域は未詳。「大日本地名辞書」は、「諸郷既知の位置と、山野分堺の形状に観察して、松嶺・田沢の諸村里に擬せらる」と記す。


大原郷
おおはらごう

「和名抄」所載の郷。同書高山寺本をはじめ諸本とも訓を欠く。現吉田よしだ町大原を遺称地とし、郷域は鹿児島湾岸沿いの現姶良あいら町の一部にわたっていたという推測も可能である。


大原郷
おおはらごう

「和名抄」は諸本とも訓を欠く。推定郷域は吉野よしの川上流域と後山うしろやま川流域の段丘面を中心とする、現英田郡大原町北部から東・西の粟倉あわくら村にかけての地域と考えられる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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