知恵蔵 「大学入試改革問題」の解説
大学入試改革問題
大学入学者選抜についての全国規模の共通試験は、1979年から89年まで実施された国公立大学入学志望者を対象とした大学共通第1次学力試験に始まる。90年からは名称を大学入試センター試験と変え、私立大学も試験成績を合否判定に利用できるようになった。国公立大学では一部の大学・学部を除きほぼすべて、私立大学でも約8割が選抜方式の一つなどとして何らかの形で参加し、例年の受験者は50万人を超える。このため、解答方式としては、解答欄を塗りつぶして示すマークシート式が全問で採用された。2015年になって文部科学省は「高大接続改革実行プラン」を発表。これにより、大学入学者選抜の改革が進められることとなった。同省によれば、グローバル化の進展や人工知能技術等の技術革新に伴って、社会構造が急速に大きく変革している、予見の困難な時代の中で新たな価値を創造していく力を育てることが必要だとする。このために、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の三者の一体的改革に取り組むとした。その中で、「知識・技能」のみならず、「知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」や主体性をもって多様な人々と協働する態度などの真の学力の育成・評価に取り組むなどとした。これに沿った大学入学者選抜の改革として構想されたのが大学入学共通テストである。記述式問題の導入については、自らの力で考えをまとめ、相手が理解できるよう根拠に基づいて論述する思考力・判断力・表現力を評価することができるとし、英語の民間検定試験については、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を適切に評価する上で有効だとしていた。今後、24年度には大学入試改革の第2弾として社会や理科でも記述式問題を実施、一部教科においては受験者がコンピューターの端末を使って解答を入力するCBT方式(Computer Based Testing)の採用などを掲げているが、これらの先行きについても第1弾の見直しの影響で不透明なものとなっている。
(金谷俊秀 ライター/2020年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報