大学事典 「大学法試案要綱」の解説
大学法試案要綱
だいがくほうしあんようこう
“Outline of Proposal Law Governing Universities”
第2次世界大戦後の新制大学発足に当たり,1948年(昭和23)10月,連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)民間情報教育局(日本)(CIE(日本))の原案による「大学法試案要綱」(1948年7月15日付)が文部省から公表された。同要綱は新制国立大学の目的,組織,設置認可と設置基準,教職員,財政等を定める大学法案要綱(日本)の形をとり,管理運営組織として多数の学外者が委員となる管理委員会を各国立大学に置くとしていた。管理委員会(日本)は学術・経済両面の一般方針を定めるとされ,学長の選出・解任,学部長・専門職員の選任,新学部の創設,予算案の作成・採択,学位の認可等の広範な権限を付与されていた。この仕組みはアメリカ合衆国の州立大学の理事会方式をモデルとし,多数の学外者を含む合議制機関を最高意思決定機関とすることにより,社会の声を大学の管理運営に反映させることを狙いとしていたが,これには日本の大学関係者から大学の自治の侵害につながるとして強い反対があり,結局,同要綱は撤回された。
歴史的に教員の権利が必ずしも強くなく,納税者や地域の声を大学の運営に反映させるのが当然と考えるアメリカと,学部教授会の意思に反する外部からの管理運営への介入を自治の侵害と捉える日本とでは,大学の自治に対する考え方に大きな違いがあった。この後,大学管理問題は長きにわたり懸案事項となり,教授会の審議事項の整理や,学外の声を大学の管理運営に反映する仕組み等が繰り返し議論されることになる。
著者: 寺倉憲一
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報