天文屈折ともいう。地球をとりまく大気のため天体からの光が屈折し,真の位置と見かけの位置がずれて見える現象をいう。天頂にある天体は地球の大気に対して垂直に光がくるのでその差はないが,天体が地平線に近づくにつれて,その光が大気を通る間が長くなるため屈折が大きくなり天体が浮き上がって見える(図)。その量は大気の密度や光の波長によって少し変化するが,天頂距離をzとするとtanzにほぼ比例する。地平線上では34′になり,大気差のない場合と比較して,天体の出現では早くから見え,没するときはおそくまで見えていて,日本内地では日の出は2分ほど早く,日の入りは2分ほどおそくなる。また日の出や日の入りのときの太陽は真円ではなく上下につぶれた形に見えるのも,太陽の上端と下端で大気差の量が違うためである。天文分野では,大気差の補正のため大気差表が作られている。
執筆者:古川 麒一郎
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