知恵蔵 「天津爆発事故」の解説
天津爆発事故
天津市は、北京、上海、重慶と並び、人口500万を超える直轄市である。首都北京と境界を接し、古くから開けた中国有数の港湾都市として栄えてきた。経済規模も上海、北京、広州、深セン(センは土へんに「川」)に次いで5位。鄧小平(トン・シアオピン)による1980年代の改革開放政策で経済技術開発区に指定され、外国資本の導入を進めて、石油化学コンビナートや工業団地が立ち並ぶ。爆発事故により、現場周辺に保管されていた製品が毀損(きそん)したり、税関施設が大破したりするなどした。事故の影響で、同地に展開していたトヨタなど日本企業を始め各国企業なども操業停止に追い込まれ、生産と流通に大きな支障が出た。様々な非公式情報やうわさなどが流され、中国政府はこれを規制する一方で、重大な違反があったとして倉庫を所有する「瑞海国際物流公司」幹部及び市や政府の監督部局の責任者らが拘束され取り調べが行われている。
近年の急速な経済発展により、保管施設など流通の体制が追い付かず、製品が無造作に野積みされているなどの、不法な管理が常態化していたとされる。今回の爆発も、水と反応して発熱・発火するような危険物が、消火のための放水によって爆発を引き起こしたものと見られている。消防隊にはこうした危険物に対する知識や訓練が行き届いておらず、倉庫従業員さえも保管物に関する理解が欠如しているといわれる。また、こうした杜撰(ずさん)な体制の背景には、関係企業の安全性を無視した利益優先や、許認可や管理の権限を有する役人による贈収賄などの腐敗があると指摘されている。
(金谷俊秀 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報