歌舞伎狂言。時代物。4幕。別名題《世響太鼓功(よにひびくたいこのいさおし)》。通称《酒井の太鼓》。河竹黙阿弥作。1873年3月東京村山座初演。配役は酒井左衛門・鳥井忠広を河原崎権之助(のちの9世市川団十郎),鳴瀬東蔵を5世尾上菊五郎。《三河後風土記》に材をとる。武田勢にかこまれた浜松城の徳川方が敗色濃くなったとき,城を預かる酒井左衛門忠継がわざと大酔,城門を開き,篝火(かがりび)をたき雲霞のごとき武田勢を眼下にして,臆せず城の櫓の太鼓を打ったので,城門まで押しよせた馬場美濃守は城中に深謀あるを信じて引きあげる。酒井が酔態によそえて主君家康をいさめ,将卒を励ましたのち太鼓を打つのがヤマ場。徳川の家臣鳥井と鳴瀬の確執和解の趣向は,団十郎と菊五郎との仲が和解した楽屋落ち的な事情をもからませてある。のち新歌舞伎十八番に編入。団十郎が演じた活歴風の演目中では息のながいもので,初世中村吉右衛門が得意とした。
執筆者:落合 清彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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