家庭医学館 「子どもの結核」の解説
こどものけっかく【子どもの結核 Tuberculosis of the Child】
現在でも、世界では、20億人が結核にかかっており、毎年1300万人の子どもが感染し、45万人の子どもがこの病気で亡くなっています。
アジア、アフリカ、南アメリカでは子どもの最大の死亡原因の1つになっています。欧米やアメリカでも、貧困層や海外からの移住者、エイズ患者での結核が大問題になっています。
日本では、子どもの結核は急速に減りましたが、近年はその減少のスピードがにぶっています。
とくに、小児結核(しょうにけっかく)の感染源である、たんの中に結核菌が発見される患者さんはほとんど減っていません。そのため、いつかかってもふしぎではない病気です。
家族やよく接触する人が結核になったら、できるだけ早く子どもの検診を受けることが必要です。
患者さんのせきによって、空中に菌をふくんだ飛沫(ひまつ)が飛び出し、これを肺に吸いこんで感染(飛沫感染)します。菌はそこで増え広がります。
[症状]
おとなや大きい子どもでは、数週間、せきや微熱が続き、疲れやすく、すこし息苦しい程度がほとんどです。まったく自覚症状がなく、定期健診で発見されることもあります。
しかし、乳児の場合は進行が速くて、熱が出て、せき、呼吸困難、ミルクを飲まない、吐(は)くなど、ふつうの肺炎と変わらない経過をとる場合があります。
[検査と診断]
X線写真には、ふつうの肺炎よりもリンパ節が大きくなっているのがみられますが、肺炎と区別がつかないことも多いのです。
たんや早朝の胃液をとって顕微鏡で見たり、培養して、結核菌が発見されれば診断が確定できます。
顕微鏡で発見されない場合には、培養検査は3~6週間かかるので、結果が出るまで待っているわけにもいきません。そこで、ツベルクリン反応(はんのう)や血液検査で、だいたいの診断をつけます。
最近では、結核菌の遺伝子を調べる方法(PCR法)が開発され、結核菌かどうかを早く確定できるようになりました。
しかし、ツベルクリンも、感染して1~2か月は陰性に出たり、培養検査でも陰性となることも多いので、症状や検査の結果などを総合してみて、診断をつけることになります。
[治療]
結核菌がからだに入っているが発病していない場合と、すでに発病している場合で、大きく分けて、2種類の治療法があります。
ツベルクリン検査が陽性でも発病していなければ、予防内服といって、イソニアジドという薬を、6か月間服用します。その間は、とくに激しい運動以外は、ふつうの生活をします。
発病していれば、イソニアジドとリファンピシンか、それにピラジナミドか硫酸(りゅうさん)ストレプトマイシンという薬を加えます。
病気の程度によって、入院したり、生活を制限しますが、以前ほどきびしく制限しなくなっています。
[予防]
ワクチンとしてBCG接種があります。子どもの場合、同居人やよく接する人が感染源になる結核患者だとわかれば、血液検査、ツベルクリン検査、X線検査をします。
感染予防については厚労省の基準に従って処置します。
乳児の場合は、その基準外ですが、検査で陰性でも2~3か月間イソニアジドなどを服用し、再度検査をするほうが無難です。