デジタル大辞泉
「子宮内膜症」の意味・読み・例文・類語
しきゅうないまく‐しょう〔‐シヤウ〕【子宮内膜症】
子宮内膜 の組織が、子宮腔以外の部位に生じる病気。月経周期 に一致して増殖・出血・再生を繰り返し、障害を起こす。
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子宮内膜症
子宮内膜が卵巣 など子宮以外の場所に定着し、月経周期に合わせて増殖することで、炎症や周囲の内臓との癒着を起こす病気。月経時に体外に排出されるべき経血の一部が卵管を通じて逆流するのが最も有力な原因と考えられ、まれに肺や腸にもできることがある。月経時以外にも腰痛や下腹部痛、排便時や性交時の痛みなどの症状があるほか、不妊症 の原因にもなる。
更新日:2021年12月3日
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家庭医学館
「子宮内膜症」の解説
しきゅうないまくしょう【子宮内膜症 Endometriosis】
◎内膜組織が異常な部位に発生する
[どんな病気か]
[症状]
[原因]
[検査と診断]
[治療]
[どんな病気か]
子宮の内側は、子宮内膜という重要な粘膜(ねんまく)によっておおわれています。子宮内膜は妊娠が成立しない場合、卵巣(らんそう)から分泌(ぶんぴつ)される女性ホルモンのはたらきによって、一定の性周期 ではがれ、月経をおこします。この子宮内膜や子宮内膜に類似した組織が、子宮内腔 (しきゅうないくう)以外の部位に発生してくることがあり、これを子宮内膜症といいます。
これらの組織は、本来の子宮内膜と同様に女性ホルモンの影響を受けるので、子宮の内側以外の部位に発生しても、性周期に応じて月経のように出血をおこすと考えられています。
このように子宮内膜症は、女性ホルモンの作用を受けて増殖、進行するため、月経のある女性だけにおこる病気で、思春期前や妊娠中、閉経後の女性にはほとんどみられません。また、この病気は良性で、がんのように生命を脅(おびや)かすようなことはありません。
●発生しやすい部位
発生しやすい部位は、子宮とそれ以外に大別されます。子宮の場合は筋層内に発生するもので、子宮腺筋症 (しきゅうせんきんしょう)といわれ、子宮内膜症の約50%を占めています。
子宮以外の臓器 に発生する場合は、腹膜内(ふくまくない)(おなかの中)と腹膜外の2つに分かれます。前者は骨盤内(こつばんない)に発生することがもっとも多いのですが、腹膜自体に発生することもあります。後者は、腟(ちつ)、外陰(がいいん )などの性器のほかに、肺やリンパ節 に発生することもあります。
子宮内膜症がおこると、その部位に腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)ができたり、周囲の組織と癒着(ゆちゃく)したりするため、痛みをおこします。非常に進行した場合は、骨盤内の臓器すべてが癒着し、一かたまりになってしまうこともあります。この癒着の程度により、病気の進行状況が3~4段階に分類されています。
[症状]
月経困難症 (げっけいこんなんしょう)は、子宮腺筋症および子宮内膜症の約70%にみられるたいせつな症状です。それまではなんでもなかったのに、最終の分娩(ぶんべん )や妊娠中絶後しばらくたって、下腹部痛や腰痛が生じたりします。回を重ねるごとに増強していくのが特徴的で、このような場合は婦人科を受診することをお勧めします。
子宮以外にできた子宮内膜症では、腰痛、下腹部痛や排便痛 、排尿痛 などをともなうことがあり、月経時以外にもこれらの症状を訴えるようになることがあります。
このほか、いろいろな臓器の癒着にともない、性交痛が現われたり不妊症になることもあります。ときには、卵巣(らんそう)に発生した子宮内膜症(卵巣子宮内膜症)の腫瘤が破裂して腹膜炎 をおこしたり、腸管が癒着して腸閉塞 (ちょうへいそく)をおこすなどして重態となり、進行卵巣がん のような症状を示し、緊急処置が必要となる場合もあります。
[原因]
子宮内膜症がおこる原因としては、2通りの説があります。子宮内膜症の組織発生を、本来の子宮内膜以外の組織に求めた説と、子宮内膜組織に求めた説です。
前者では、腹腔内(ふくくうない)の漿膜(しょうまく)がなんらかの原因で子宮内膜組織に変化するというもので、近年なお有力な説です。一方、後者は、子宮内膜が直接筋層に入り込んで子宮腺筋症をおこしたり、月経血 の逆流現象により、子宮内膜が他の部位に転移生着すると考える説で、やはり多数の支持者があります。
[検査と診断]
腟や外陰部などの見てわかる部位に発生した子宮内膜症以外は、確実に診断することはむずかしいものです。年齢、症状、内診所見などを総合的に検討して診断しますが、子宮内膜症を確実に診断できる検査法はなく、子宮内膜症を疑って開腹手術を行ない、初めて確実に診断できることも多いのです。
超音波検査 簡単で苦痛もなく、くり返し検査できる長所をもった性能のよい超音波断層機器が一般に普及しており、補助診断法として有用です。
とくに腟式超音波の進歩は著しく、卵巣子宮内膜症や子宮腺筋症などに高い診断的意義があります。
CT、MRI検査 CTおよびMRIも一般病院での普及率が高くなってきており、これらの所見は超音波像に似ていますが、形態的な異常を描出する能力はさらにすぐれています。
直視下診断法 子宮内膜症の診断は、原則として腹腔鏡 (ふくくうきょう)または開腹手術によって診断すべきとされています。腹腔鏡による病態診断は、子宮や卵巣の形態、色調の異常や癒着の状況を内視鏡により拡大観察するもので、やはり高い診断的意義があります。
血清学的検査 卵巣がんの抗原である血液中のCA125(腫瘍(しゅよう)マーカー (「腫瘍マーカー 」))は、本来、卵巣がんや子宮内膜がん の場合に高値を示すとされています。しかし今日では、これらのがん以外の婦人科疾患でも検討され、とくに子宮内膜症や子宮腺筋症で高値を示すことが注目され、補助診断法の1つとして用いられています。
[治療]
治療は、手術療法 とホルモン剤 による薬物治療の2つに大きく分けられます。
治療方針を決定する因子としては、患者さんの年齢、これまでの分娩歴、自覚症状、進行の程度(病気の範囲と癒着の程度)があげられます。
子宮内膜症は比較的若い人に発生しやすく、不妊症をともないやすいので、治療法の主体は、特有の痛みなど、自覚症状の除去 とともに、妊娠率を上げることにあり、病気の進行具合と将来子どもを希望するか否かという点で、年齢を考慮しながら保存的な治療法か根治的な治療法かを選択します。
最近、とくに進行していない場合にはホルモン療法 を先行させることが多いので、病歴の慎重な検討と診察を必ず受けて、担当の医師と相談し、治療方針を決めていけばよいでしょう。
●手術療法
将来子どもを希望する場合の手術療法では、子宮内膜症の病変部だけを摘除するのが原則ですが、手術後も病変部が残っている場合は、3~6か月の術後ホルモン療法を行なうと、妊娠する可能性が高いようです。とくに子どもを希望しない場合、子宮、両方の卵巣およびその他の病気の部位すべてを取り除く根治的な手術を行ないます。
いずれの場合も、必要があれば、手術を行ないやすくするように、手術前3~4か月間のホルモン治療が勧められます。
●ホルモン療法
ホルモン療法は、ホルモン剤を直接的あるいは間接的に病巣に作用させ、無月経状態にして病気の勢いをとめようとするものです。
女性ホルモンのうちの1つであるプロゲステロンを使用し、子宮内膜症の組織を縮小させる方法や、プロゲステロンに少量のエストロゲンを加えて使用する方法があります。
しばしば行なわれるのは、避妊に用いる経口避妊薬の使用で、子宮内膜症の組織の増殖が抑えられます。
この場合は、20~21日間内服した後、月経のような出血があってから再び内服を開始する方法と、薬の内服量を徐々に増やしていき、月経様出血をまったくとめてしまう2つの方法があります。後者は、妊娠時と同じようなホルモン環境をつくり出そうとする偽妊娠療法(ぎにんしんりょうほう)と呼ばれるものです。
一方、今日では男性ホルモンの誘導体を用い、4~6か月服用して、更年期様の無月経状態にもちこむ治療法がさかんに用いられ、現在ではホルモン療法の主役となっています。
しかし、ホルモン療法には副作用の問題があり、際限なく続けられず、また、この療法を行なっている間は絶対に妊娠しません。さらにホルモン療法は、肝臓および心臓疾患、内分泌系疾患などを含めた慢性疾患がある場合には行なえないので、注意が必要です。
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子宮内膜症 (しきゅうないまくしょう) endometriosis
子宮内膜ないし内膜様組織が,本来あるべき子宮腔内面以外の部位で異所性に拡大増殖する場合をいう。好発部位としては子宮が最も多く,子宮筋層内で増殖する内性子宮内膜症(子宮腺筋症adenomyosis uteriともいう)と,卵巣,卵管,ダグラス窩(か),腹膜,S状結腸と直腸,卵管,子宮の靱帯(じんたい),直腸腔中隔,膀胱および膀胱腹膜などに増殖する外性子宮内膜症とがある。子宮内膜症とくに外性子宮内膜症が婦人の病気として特異な点は,良性の非腫瘍性の病気であるにもかかわらず,隣接組織を浸潤・破壊するとともに,リンパ性に浸潤して他の組織を侵し,繊維症,強い癒着をひき起こす結果,卵巣破壊,卵管変形などの骨盤内臓器障害を起こし,不妊症などの原因となることである。また血行を介しても転移する。卵巣内で増殖・出血を繰り返す結果,卵巣にチョコレート様内容をもつテール囊腫Teerzyste(タール囊胞tarry cystともいう)が発生することもある。
症状としては,漸増する月経困難症 ,下腹痛,過多頻発月経,排便痛,性交痛などである。また,婦人科双合診で強い圧痛と硬結を子宮仙骨靱帯,ダグラス窩にふれる。近年,その発見頻度は1940年代1~3%,67年13%,74年40%と著しく増加しており,婦人の社会進出に伴う一種の文明病とさえいわれている。30~40歳に最も多いが,近年では20歳代にも相当の頻度でみられることがわかってきている。
子宮内膜症は,放置すると増悪し不可逆的な変化をきたすので,早期治療が必要である。治療としては,性ステロイドホルモンによる偽妊娠療法,ダナゾール服用による偽閉経療法,高度の場合には原則として,これらのホルモン療法後に手術療法を行う。 執筆者:加藤 順三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」 改訂新版 世界大百科事典について 情報
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子宮内膜症 しきゅうないまくしょう
子宮内膜組織または類似組織が、本来あるべき子宮腔(くう)以外の部位(異所)に生じ増殖する疾患。そのため異所性子宮内膜症ともよばれる。進行性の病変であり、原因不明の部分もあるが、卵巣から分泌される性ステロイドホルモンであるエストロゲンが強く関与して増殖する。おもな症状は月経痛で、ほかに排卵期などのエストロゲン増加や病変の進行につれて、下腹部痛や腰痛、頭痛あるいは排便時痛のほか、性交痛などを伴う。卵巣の腫瘍(しゅよう)に似た病変である子宮内膜症性嚢胞(のうほう)(チョコレート嚢胞)やダグラス窩(か)病変などもみられ、習慣性流産や不育症の原因ともなり、不妊となることもある。
疼痛(とうつう)に対する治療としては、痛みを軽減する消炎薬投与などの対症療法を行う。病変に対しては、薬物療法としてダナゾールやGnRHアゴニスト(gonadotropin releasing hormone agonist)を投与する偽閉経療法(卵巣を刺激するホルモンの分泌を抑制し、疑似的に閉経した状態にする)を行い、それでも改善が望めない場合は手術により病変部を切除する。
[編集部]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) 日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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子宮内膜症(後腹膜腫瘍ほか,腹膜疾患)
(3)子宮内膜症
通常は婦人科疾患だが内科領域でも遭遇する.子宮内膜組織が子宮内腔以外の場所に存在する状態.内膜組織自体は正常だが場所が異常なため,性周期に伴って内膜の増殖や剥離が起こり,月経時に出血する.出血すると血液は局所に貯留し,血性の囊胞となる.骨盤腹膜に生起して進行すると広汎な癒着を生じるに至り,その過程で月経痛,月経困難症を起こす.ときに腹膜腫瘍や腹膜炎などと鑑別を要することがある.[藤沢聡郎・松橋信行]
■文献
Debrock G, Vanhentenrijk V, et al: A phase II trial with rosiglitazone in liposarcoma patients. Br J Cancer, 89: 1409-1412, 2003.
Saab S, Hernandez JC, et al: Oral antibiotic prophylaxis reduces spontaneous bacterial peritonitis occurrence and improves short-term survival in cirrhosis: a meta-analysis. Am J Gastroenterol, 104: 993, 2009.
出典 内科学 第10版 内科学 第10版について 情報
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子宮内膜症【しきゅうないまくしょう】
子宮内膜に類似した組織が,子宮内腔以外に発生する病気。主に子宮筋膜層,卵巣などの骨盤内臓器,腟や外陰などの性器に発生し,まれに肺やリンパ節に発生することもある。発生部位に腫瘤(しゅりゅう)を生じ,周囲の組織と癒着(ゆちゃく)を起こしやすい。月経困難 症,下腹痛,過多月経,不正出血,性交痛などが主な症状で,卵管癒着によって不妊となることもある。治療はホルモン療法と,手術による病変部の摘出。 →関連項目月経過多 |子宮後屈症
出典 株式会社平凡社 百科事典マイペディアについて 情報
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子宮内膜症 しきゅうないまくしょう endometriosis
子宮内膜の組織が子宮内腔以外の組織,臓器に増殖した状態をいう。成熟女性にみられる。子宮体部に好発し,次いで卵巣に発症しやすい。子宮筋内に増殖したものは腺筋症と呼び,子宮筋腫を合併することが多い。月経時の疼痛の主要な原因となる。ホルモン剤による治療が有効なことが多いが,手術による除去が必要な場合もある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の 子宮内膜症の言及
【代償月経】より
…代償月経として胃,腸,肺,乳腺,皮膚,臍窩(さいか),外耳道,眼瞼など多様な部位からの出血が報告されている。また代償月経のうち一部は[子宮内膜症]あるいは子宮腔と連絡をもつ瘻孔(ろうこう)によるものと推定されている。鼻からの代償月経の治療としては,出血する粘膜部を焼灼することが有効といわれる。…
※「子宮内膜症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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