不育症(読み)フイクショウ(その他表記)recurrent pregnancy loss

デジタル大辞泉 「不育症」の意味・読み・例文・類語

ふいく‐しょう〔‐シヤウ〕【不育症】

妊娠はするが、流産早産を繰り返し、生児を得られない病態総称反復習慣流産ほか死産早期新生児死亡を繰り返す場合なども含まれる。原因として染色体異常・子宮形態異常・内分泌異常・血液凝固異常・免疫異常・感染症などがあげられるが半数以上は原因不明。

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共同通信ニュース用語解説 「不育症」の解説

不育症

流産や死産などを2回以上繰り返す状態。不育症に悩む夫婦は推定で年間3万組との研究結果もある。日本医療研究開発機構の研究チームや名古屋市立大などによると、原因の約4割が胎児の染色体異常。難病抗リン脂質抗体症候群や、子宮の奇形、夫婦どちらかの染色体異常も原因となる。適切な検査や治療、カウンセリングで85%が出産可能になる。検査や治療の一部は保険適用されている。国の助成制度はなく、一部自治体が独自の支援策を実施している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不育症」の意味・わかりやすい解説

不育症
ふいくしょう
recurrent pregnancy loss

流産または死産の経験が2回以上ある状態。ただし、生産歴(生児を生んだ経験)の有無は問わず、流産または死産が連続している必要はない。不育症のうち、流産を2回以上連続しておこすものを反復流産、3回以上連続しておこすものを習慣流産という。胎囊(たいのう)が確認されず妊娠反応出現のみに終わる生化学的流産は妊娠に含めず、胎囊が確認されたもののみを妊娠とし、その後(妊娠22週未満)に妊娠が終了したものを流産として計上する。流産自体は全妊娠の約15%におこるが、不育症の頻度は日本では5%、欧米では2.5%未満とされている。

[久具宏司 2025年7月17日]

原因

流産の原因でもっとも多いのは、受精胚(はい)の染色体の数が46本でなく、それより多かったり少なかったりする異数性を有する例である。母体の年齢の上昇に伴い、染色体の異数性の出現頻度が高まることから、不育症の頻度も母体の年齢とともに上昇する。また、子宮内腔(ないくう)の慢性炎症や子宮の形態異常は流産や死産をおこしやすく、不育症の原因となる。子宮形態異常には、中隔子宮などの先天性のものと子宮筋腫(きんしゅ)、子宮腺筋症、子宮腔(くう)内癒着などの後天性のものがあり、どちらも不育症の原因となりうる。これらは子宮卵管造影や超音波、MRIなどの画像検査により診断される。形態異常の有無にかかわらず、妊娠の進行とともに子宮頸管(けいかん)が開大する頸管無力症も不育症の原因となる。母体の有する疾患、素因のために不育症となることもある。そのなかには、抗リン脂質抗体症候群、甲状腺機能低下症、糖尿病、血栓症をおこす傾向のある血栓素因を有するもの、高度の肥満が含まれる。両親のいずれかが染色体構造異常を有する場合も不育症の原因となる。高度のストレス、喫煙、過度のアルコール摂取などの生活習慣が不育症の原因となっていることもある。

[久具宏司 2025年7月17日]

治療

それぞれの原因に応じた治療が必要となる。子宮形態異常に対する手術などの外科的治療、慢性炎症に対する抗菌薬の服用、母体の有する疾患、素因に対するそれぞれの内服治療、生活習慣の改善が必要である。両親の一方に染色体構造異常がある場合や、反復する流死産が受精胚の染色体異数性に起因する可能性が高い場合は、受精胚に対する着床前遺伝学的検査(PGT)を行うことで流産を回避して生児獲得につなげることが可能である。

[久具宏司 2025年7月17日]

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世界大百科事典(旧版)内の不育症の言及

【不妊症】より

…結婚後の避妊期間を除いて,2年以上経過しても生児を得られない状態をいう。全夫婦の約10%にみられるといわれ,1度も妊娠していないものを〈原発性不妊〉,すでに子どもはいるが,その後妊娠しないものを〈続発性不妊〉といい,妊娠はするが生児を得られない場合を〈不育症infertility〉と呼んで区別している。不妊の原因は種々たくさんあり,男性,女性のいずれにあるかで〈男性不妊〉と〈女性不妊〉に大別され,その比率は2対3といわれている。…

※「不育症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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