宇野信夫(読み)ウノ ノブオ

20世紀日本人名事典 「宇野信夫」の解説

宇野 信夫
ウノ ノブオ

昭和・平成期の劇作家,演出家



生年
明治37(1904)年7月7日

没年
平成3(1991)年10月28日

出生地
埼玉県本庄市

出身地
東京・浅草

本名
宇野 信男

学歴〔年〕
慶応義塾大学文学部国文科〔昭和4年〕卒

主な受賞名〔年〕
NHK放送文化賞(第21回・昭44年度),芸術選奨文部大臣賞〔昭和46年〕「柳影沢蛍火」,紫綬褒章〔昭和47年〕,菊池寛賞(第25回)〔昭和52年〕,勲三等瑞宝章〔昭和53年〕,大谷竹次郎賞(第8回・昭54年度)「森鷗外原作・山椒太夫」,文化功労者〔昭和60年〕

経歴
歌舞伎を中心とする劇作・演出家の第一人者。慶大在学中から戯曲を書き、昭和8年「ひと夜」でデビュー。10年、6代目尾上菊五郎のために書き下ろした「巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)」が評判となり、以来6代目とのコンビで「人情噺小判一両」「髑髏妻」「初松魚」など新作歌舞伎の傑作を次々と世に送り出した。戦後近松世話物曽根崎心中」などの新演出を試み、新風を送り込んだ。江戸下町の人情ばなしを小説、エッセーに描き、数々の名編も発表。著書に「大部屋役者」「しゃれた言葉」「人の生きるは何んのため」「菊五郎夜話」など多数。「宇野信夫戯曲選集」(全5巻)の他、小説集、随筆集もある。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宇野信夫」の意味・わかりやすい解説

宇野信夫
うののぶお
(1904―1991)

劇作家。東京生まれ。慶応義塾大学国文科卒業。1933年(昭和8)に発表の『ひと夜』が同年築地(つきじ)座で初演され、劇作家としてデビューした。35年『吹雪(ふぶき)峠』が2世市川左団次、『巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)』が6世尾上(おのえ)菊五郎で初演され、以降はもっぱら新作歌舞伎(かぶき)の作家として活躍した。とくに江戸市井(しせい)の生活に素材をとった世話狂言は菊五郎の名演と相まって評判をとった。第二次世界大戦後はラジオ、テレビ、また商業演劇の作品も書き、自ら演出している。古典の現代化にも積極的で、53年近松の『曽根崎(そねざき)心中』を脚色、演出し、大成功を収めた。72年芸術院会員、85年文化功労者。

[水落 潔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宇野信夫」の意味・わかりやすい解説

宇野信夫
うののぶお

[生]1904.7.7. 東京
[没]1991.10.28. 東京
劇作家,演出家。江戸下町の庶民を描くのが得意。 1935年,2世市川左団次による『吹雪峠』上演が,いわゆる大劇場との機縁となり,『巷談宵宮雨 (こうだんよみやのあめ) 』 (1935) から『俥』 (48) にいたるまで,6世尾上菊五郎のために世話物を書き続けた。6世の没後も歌舞伎のために活躍。 53年には2世中村鴈治郎と扇雀 (3世鴈治郎) のために近松門左衛門作『曽根崎心中』を脚色・演出し,扇雀が一躍スターの座を得て以後も再演を重ねた。創作,脚色作品は 200をこえ,新作歌舞伎の作者,演出家の第一人者であった。江戸下町の人情ばなしを小説や随筆にした作品も多い。 72年日本芸術院会員,85年文化功労者。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「宇野信夫」の解説

宇野信夫 うの-のぶお

1904-1991 昭和時代の劇作家。
明治37年7月7日生まれ。昭和8年築地座で上演された「ひと夜」が第1作。10年6代尾上(おのえ)菊五郎主演の「巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)」で新作歌舞伎作家の地位を不動のものにした。江戸世話物の伝統をうけつぎ昭和の黙阿弥(もくあみ)とよばれる。戦後の代表作は「柳影沢蛍火(やなぎかげさわのほたるび)」。47年芸術院会員。60年文化功労者。平成3年10月28日死去。87歳。埼玉県出身。慶大卒。本名は信男。

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367日誕生日大事典 「宇野信夫」の解説

宇野 信夫 (うの のぶお)

生年月日:1904年7月7日
昭和時代の劇作家;演出家
1991年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の宇野信夫の言及

【巷談宵宮雨】より

…歌舞伎狂言。宇野信夫作。2幕。…

【柳沢騒動物】より

…明治に入って1875年8月東京中村座の河竹黙阿弥作《裏表柳団画(うらおもてやなぎのうちわえ)》は,柳沢騒動の時代物の筋に出羽屋忠五郎と武蔵屋徳兵衛の世話物の筋をないまぜた作品。また1970年5月,国立劇場で上演された宇野信夫作の《柳影沢蛍火(やなぎかげさわのほたるび)》は,傑作との世評を得た。【井草 利夫】。…

【藪原検校】より

…脇筋として大工政五郎が2役で活躍する。また宇野信夫作《沖津浪闇不知火(おきつなみやみのしらぬひ)―不知火検校》(1960年2月歌舞伎座初演)は本作を換骨奪胎して成功,主演の17世中村勘三郎も憎々しいなかに愛嬌のある演技で好演。終幕で,捕縛された検校が群衆に石を投げつけられ血まみれになりつつ,〈……お前達はちっぽけな胆っ玉に生まれついたばっかりに己のような真似ができず,せいぜい祭りを楽しむのが関の山……〉と嘲笑する個所に〈悪の楽しさ〉をネガティブに表出する作者の意図がこめられている。…

※「宇野信夫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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