雪粒子が風によって空中を舞う現象。降雪がない場合の吹雪、すなわち一度地面に積もった雪が風に吹き上げられたものは地吹雪(じふぶき)とよばれることもある。風雪は、強風を伴った降雪のことで、南極や北アメリカ大陸などで発生する暴風雪は、ブリザードとよばれる。
実際の吹雪のなかで、飛んでいる雪粒子が、降雪なのか、一度地面に積もった雪が風に吹き上げられたものなのかを判別することは、難しいことが多い。寒冷地の道路には、吹雪による視程悪化や吹きだまりの交通障害を防ぐために、種々の防雪柵が設置されている。吹雪による吹きだまりや雪庇(せっぴ)は、雪崩(なだれ)の原因になることもあるが、北アメリカ大陸、シベリア、南極氷床などの平坦地では、吹雪による雪輸送が、水資源や気候維持に関連した水輸送の重要な役割を果たしている。
吹雪は風速が大きいほど、また気温が低いほど発生しやすい。吹雪の発生臨界風速は、気温がほぼ零下10℃以下ではおよそ毎秒5メートルであるが、零下10℃以上では気温が高いほど大きくなる。これは、風によって雪粒子が雪面から飛び出すためには、雪粒子間の結合が破壊されなければならないが、結合は気温が高いほど発達しているためである。吹雪のなかでの雪粒子の運動形態は、雪面付近を移動する「転がり(ころがり)」、雪面をぴょんぴょんと飛び跳ねる「跳躍」、および文字通り空中を舞う「浮遊」の三つに分けられる。転がり、跳躍、および浮遊の高さは、雪面からそれぞれ、おおよそ1ミリメートル、数~数十センチメートル、および10~数百メートルである。雪粒子の空間濃度は、雪面が最大で、高度とともに急速に減少する。典型的な吹雪において、雪面から10センチメートルに雪粒子の全輸送量の約80%が含まれる。
[前野紀一]
降ってくる雪や地上から舞い上げられた雪が,激しい風で空中を乱れ飛ぶ状態をいう。前者を風雪,後者を地吹雪と呼び区別する。地吹雪は,寒冷地では空が晴れていても強風(5m/s以上)が吹くと発生する。地吹雪は一般に気温が低いほど,また風の強いときほど激しくなり,10m先が見えなくなることも多い。南極や北米大陸などでしばしば発生する猛烈な吹雪はブリザードと呼ばれる。このときでも地吹雪の及ぶ高さは雪面上20~30m,最大50m程度で,その上空は視界がよい。吹き飛ばされた雪が家屋,構造物の背後,林地,あるいは周囲の雪面より低い鉄道や道路の路面など,風の弱い場所に移動してくると,そこにとまって吹きだまりをつくる。
執筆者:若浜 五郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)
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