翻訳|spiritualism
人間は肉体と霊魂とからなり、死により肉体が消滅しても霊は存在し続け現世の人と交渉をもつことができるという信仰。古代および原始社会での信仰に広くみられるもので、今日、文明社会でも葬祭の行事などにその考えの生きていることを知ることができる。とくに19世紀中ごろから欧米を中心に流行した同種の思想を近代心霊主義という。
[大谷宗司]
18世紀、スウェーデンの自然科学者でかつ神秘家であるスウェーデンボリは、彼が体験した霊界の事情を伝え、近代心霊主義の先駆的役割をなした。1848年、アメリカのニューヨーク州ハイズビルのフォックス家に叩音(こうおん)現象がおこった。同家の姉妹がこの音との通信法を考え出し、それが以前その家に住んでいて殺害された人の霊からのものだということが判明したということになり、この事実は、人間の死後個性の存続、霊界と現世との通信可能性を示す証拠であるとされた。このことが、さらに各地に霊媒の出現、交霊会の流行をもたらし、心霊主義が全米に波及した。また有名な霊媒がヨーロッパに渡り、この思想は広がった。こうした風潮は、当時、物質科学の進歩に伴う唯物的思想や、人間の霊性を否定する進化論などに抵抗を感じていた人たちの心をとらえた。日本では浅野和三郎(わさぶろう)(1874―1937)が1920年(大正9)ごろ心霊主義の紹介啓蒙(けいもう)を行った。心霊主義は心霊現象の科学的研究に識者の関心を刺激した。
[大谷宗司]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この種の現象は古来各地で知られている。とくにヨーロッパ諸国では,いわゆる心霊主義spiritualismの伝統があり,スウェーデンボリの著作などを通じてなじみが深かったが,19世紀中葉までは系統的研究の対象とはならなかった。1847年デービスAndrew Jackson Davisというアメリカの無学な一青年が催眠のトランス状態で神秘的大著を口述するという事件があり,翌48年にはニューヨーク州の寒村で〈ハイズビル事件〉が起こる。…
※「心霊主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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